カレントアウェアネス-E
No.95 2006.11.22
E571
【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(10)フィリピン
第14回アジア・オセアニア地域国立図書館長会議(CDNLAO)のホスト国,フィリピンからは,フィリピン国立図書館(NLP)が中心となって運営している電子図書館サービス“eLib”の経緯・現状の報告がなされた。
NLPの近年の最大の成果といえるeLibは,政府の電子政府政策の一環として助成を受けたプロジェクトであり,2005年4月からサービスを開始している。このプロジェクトにはNLP,高等教育委員会,農業省,科学技術省,フィリピン大学の5つの政府機関が参画しており,NLPはデータセンターの機能を担っている。
eLibは,フィリピンの電子情報のポータルサイトとして,5機関の書誌データ・索引データ,フィリピンに関連する2,500万点を超えるデジタル画像をウェブ経由で提供している。また11のオンラインデータベースと契約し,全文が見られる電子ジャーナル2万9,000タイトルも国内外に提供している。ただし,デジタル画像および全文のデータは,データ提供機関が自機関のデータを参照する場合などの例外を除いて,基本的に有償となっている。またeLibに対する政府からの支援も終了したことから,今後の継続性も課題となっている。
フィリピン全国には,2005年時点で公共図書館が1,094,研究図書館が300以上ある。もっとも,公共図書館の中には,設置母体から運営費用を得られていないところもあるという。資金不足の中,どのように図書館サービスを拡充していくかが,フィリピン図書館界の大きな課題となっている。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/documents/phil06.pdf
Prudenciana Cruz. “Philippine Country Report”. 14th CDNLAO Meeting. Mandaluyong, 2006-03.
http://www.elib.gov.ph/
http://www.ndl.go.jp/en/publication/cdnlao/054/544.html