E567 – 図書館員は書評をどう書き,どう読むのか?

カレントアウェアネス-E

>No.95 2006.11.22

 

 E567

図書館員は書評をどう書き,どう読むのか?

 

 米国においては,図書館員が執筆する書評はあらゆる分野にわたり,分量も豊富である。例えば『Library Journal』誌には毎月数十ページにわたる新刊書評が掲載され,また米国図書館協会(ALA)の刊行する『Booklist』や『Choice』も豊富な書評を提供している。これらの書評は,図書館員の間でも広く読まれ,蔵書構築業務に使われる影響力の大きいツールとなっている。先日も,この3誌の編集姿勢に関する批判文がウェブで公開された。これは3誌が,インテリジェントデザインに関する書籍について,非好意的な立場の資料を比較的多く取り上げ,結果として非好意的な資料が好意的なものに対して所蔵率が高くなっている,との趣旨のものである。書評は,個々の記事の内容だけでなく全体としての総量のバランスについても客観性が求められるという,示唆に富む指摘である。

 このような中,ALAのレファレンス・利用者サービス部会(RUSA)の蔵書構築評価分科会(CODES)が,書評(レビュー)の書き手・読み手のための手引きを公開した。「基本レビューのための要素」と題されたこの手引きは,30ページの本文と3つの付録から構成されており,RUSAのガイドラインとしては比較的詳解なものとなっている。

 この手引きの第一義的な目的は,書評家を目指す図書館員に良い書評を書くための要素を示すことである。多くの書評に見られる共通要素を整理した上で,資料の媒体・分野ごとに書評執筆のポイントが示されている。ここでは,各種の書籍(小説,ノンフィクション,学術文献,児童書など)のほか,電子資料,視聴覚資料についても章立てされている。例えばウェブサイトについては,編集者のチェックが入っていないという特徴があるため,信頼性や安定性に対する注意がより一層必要であるといった指摘が盛り込まれている。

 全体として,図書館員の書評執筆という業務に求められる専門性の高まりを感じさせるものであるとともに,図書館員の書評に対する書き手・読み手としての関わり方を,改めて考えさせられる内容である。

ref.
http://www.ala.org/ala/rusa/rusaprotools/referenceguide/ElementsforReviews.pdf
http://www.ala.org/ala/rusa/rusaprotools/referenceguide/Default2277.htm
http://www.ala.org/ala/rusa/rusaourassoc/rusasections/codes/codes.htm
http://www.libraryjournal.com/community/891/Reviews/42795.html
http://www.ala.org/ala/booklist/booklist.htm
http://www.ala.org/ala/acrl/acrlpubs/choice/home.htm
http://webpages.charter.net/tomeboy/bias.html
http://lisnews.org/article.pl?sid=06/11/03/153256
蔵書評価に関する調査研究 (図書館調査研究リポートNo.7)