カレントアウェアネス-E
No.94 2006.11.9
E565
【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(9)ニュージーランド
ニュージーランド国立図書館は,人々と生活のあらゆる側面で重要となる情報とを繋げるというビジョンのもと,電子図書館化を軸に厚みのある取り組みを実践している。特に,デジタル情報社会への対応のため,政府省庁と連携するとともに,国内外の関係機関との協同関係を強化している。
まず特徴的なのが,EPICとよばれる電子資料の共同購入である(CA1524参照)。このサービスにより国内外の 約1万6千のフルテキストの雑誌記事の他,電子ニュース,写真,画像など,多様な電子出版物へのアクセスを可能にしている。また, FindNZarticlesでは,公共図書館と協同で国内の雑誌・新聞の索引を作る実験事業も行い,本格運用に向けて準備を進めている。
またデジタル文化遺産の収集・長期保存・提供プロジェクトである「国家デジタル遺産アーカイブ」(National Digital Heritage Archive:NDHA)は,電子資料の収集・保存・提供を行うシステムを装備しているが,2008年を目処にウェブ情報のロボット収集の仕組みを開発中である。またMatapihiという,5万件以上の写真,絵画,彫刻等の画像を検索できるデジタルアーカイブも提供されている。
このような事業を通じたサービス基盤の上で,国立図書館とオークランドその他の公共図書館とが協同で進めているAnyQuestions.co.nzでは,児童・生徒に対して宿題支援などのチャットレファレンスを提供している。またオーストラリアの国立・州立図書館等と協同して,Ask Nowとよばれるチャットレファレンスも提供している(E519参照)。
このほか,電子法定納本(E-legal deposit)や,関連する著作権法・知的財産権法など,法整備も進められている。また,図書館政策に関する政府諮問機関である図書館情報諮問委員会(LIAC)が,2003年に新たに設立されるなど,体制の整備も進んでいる。
このように活発な動きを進めるニュージーランド国立図書館であるが,さらに次期戦略的長期計画である「次世代国立図書館(the Next Generation National Library)」を取りまとめ中である。ここでは,これまで進めてきた電子化戦略が確認されるとともに,革新と研究開発を促進する職場環境の創出が盛り込まれる予定である。
今後もニュージーランドの動きには注目していく必要があろう。
(注)『カレントアウェアネス』第290号(12月20日発行予定)には、ニュージーランドの納本制度に関する紹介記事(執筆・熊倉優子氏)を掲載する。
Ref:
http://www.natlib.govt.nz/index.html
http://epic.org.nz/nl/epic.html
http://findnzarticles.natlib.govt.nz/
http://www.lianza.org.nz/news/newsroom/news1137643403.html
http://www.matapihi.org.nz/
http://www.anyquestions.co.nz/en/anyQuestions.html
http://www.asknow.gov.au/
http://www.alia.org.au/publishing/aarl/35.2/full.text/wilson.keys.html
http://www.liac.org.nz/
http://www.natlib.govt.nz/files/initiatives/Next-Generation-National-Library.doc
E519
CA1524