カレントアウェアネス-E
No.82 2006.05.10
E481
元気な高齢者への図書館サービスの在り方(米国)
CA1583で紹介しているとおり,米国の図書館界ではベビーブーマー世代の定年退職に伴う人員不足が懸念されている。しかし,ベビーブーマー世代の定年退職は,図書館職員の人口構成に影響を及ぼすに留まらない。健康で,活動的な高齢者が大幅に増加するということになり,図書館もこれらの利用者に対して,今までの高齢者サービスとは異なるサービスを展開する必要があるということである。このような認識のもと,全国規模で図書館を支援する活動を行うNPO「図書館のための米国人協会」(Americans for LibrariesCouncil:ALC)と博物館・図書館サービス機構(IMLS)が,2005年9月に「変化のためのデザイン:図書館と生産的なエイジング(加齢)」と題するフォーラムを開催した。このたび,その報告書が公開された。
フォーラムでは,図書館は活動的・生産的な高齢者に対し,生涯学習の機会と,コミュニティ活動への参加の機会を提供していくべきであること,また高齢者は図書館やコミュニティにとっての「財産」であり,協働していくべきであることが提起された。これらの認識のもと,(1)高齢者に対する社会的認識を変えていくために図書館が果たすべきリーダーシップ,(2)模範事例,(3)高齢者へのサービスに関する研修・教育カリキュラムの必要性,(4)実践事例を共有するためのネットワーク形成,(5)生涯学習や社会参加に関する,ボランティアセンターや健康教育機関,職業訓練機関などとのパートナーシップが主なテーマとして議論された。
ALCとIMLSは,今後もこのような議論や教育の場を設けたり,高齢者とともに行う図書館活動を支援したりしていくとしている。
Ref:
http://www.imls.gov/pdf/DesignsforChange.pdf
http://www.libraryjournal.com/article/CA6325542.html
CA1583