カレントアウェアネス-E
No.53 2005.02.16
E297
オープンアクセス勧告の展開と後退
英米両国議会の勧告(CA1544参照)から半年,学術情報のオープンアクセス化の展開が明らかとなってきた。米国では2月3日,米国国立衛生研究所(NIH)が「NIH助成研究の成果である出版物のアーカイブに対するパブリック・アクセスの強化についての方針」を正式に通知した。これにより,5月以降,NIHの助成金を受けた研究者は,その成果である学術論文のデジタル・コピーを提出すること,PubMed Centralで一般公開する日付(出版後12か月以内)を指定することを要求される。
オープンアクセス推進派からは方針策定に歓迎の意向が表明される一方で,2004年7月や9月の構想時に比べ,原稿の提出が義務(requirement)から任意(request)へトーンダウンしていること,公開猶予機関が6か月から12か月に延長されていること,出版社との著作権処理交渉や公開時点の指定を各著者に委ねることで研究者に負担を強いるようになることなどに対して厳しい批判も寄せられている。
また,英国では2月1日,下院科学技術委員会の勧告に対する第2回目の政府回答書が公表された。11月の回答書に対する委員会の批判(E270参照)への再反論で,機関リポジトリについては奨励に値するとの認識を示しながらも,設置は各機関の判断によるものとしており,前回同様中立的立場を強調する回答となっている。
Ref:
http://www.biomedcentral.com/news/20050204/02/
http://grants.nih.gov/grants/guide/notice-files/NOT-OD-05-022.html
http://mwr.mediacom.keio.ac.jp/~mine99
(NIH最終方針声明の本文の日本語訳)
http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200405
CA1544
E270