E270 – オープンアクセス勧告に対する英国政府の回答書

カレントアウェアネス-E

No.49 2004.12.01

 

 E270

オープンアクセス勧告に対する英国政府の回答書

 

 英国下院科学技術委員会のオープンアクセス勧告(E222参照)に対する英国政府の回答書が,11月8日,公表された。貿易産業省を中心にまとめられた政府回答は,オープンアクセスの理念には賛意を示しながらも,学術出版産業は健全かつ競争的であり,現行の学術情報流通に変革すべき大きな問題があるとは思えないとの認識を示すものとなっている。主要勧告である機関リポジトリの全国的設置については,個々の機関の判断によるものとして,政府による義務化,推進策には消極的な姿勢をみせている。また,特定の出版モデルを支持することはできないとして,著者支払い型モデルの実験的推進のための基金設立の意思も今のところないとしている。

 委員会側はこうした政府の姿勢に対して,貿易産業省が出版産業のロビー活動に配慮して,慎重な立場を取るよう政府諸機関に働きかけたのではないかとして激しく非難している。また,著者支払い型モデルの批判に集中し,機関リポジトリその他の勧告について検討を怠っているとも指摘している。

 ただ,同じ回答書に含まれる情報システム合同委員会(JISC)からの回答は勧告に大筋で合意するもので,政府内においてオープンアクセスへの対応に温度差がみられることが浮き彫りになっている。JISCは既に機関リポジトリの支援を含む100万ポンド(約2億円)の助成プログラムを立ち上げており,これからもオープンアクセス推進策を推し進めていくとしている。今後は,政府回答とは独立して方針を定めることのできる研究会議(Research Councils)の対応に注目が集まることとなる。

Ref:
http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200304/cmselect/cmsctech/1200/120002.htm
http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns99996633
http://www.biomedcentral.com/news/20041109/02/
http://www.jisc.ac.uk/index.cfm?name=programme_404
E222