E2921 – デジタルアーカイブフェス2026<報告>

カレントアウェアネス-E

No.532 2026.10.15

 

 E2921

デジタルアーカイブフェス2026<報告>

内閣府知的財産戦略推進事務局・加藤寛子(かとうひろこ)

 

  2026年8月25日、国立国会図書館(NDL)と内閣府知的財産戦略推進事務局の共催により、「デジタルアーカイブフェス2026」を開催した。本年は「デジタルアーカイブの時代の交差点」をテーマに掲げ、最新の動向・取組の報告や、デジタルアーカイブ活動の好事例の顕彰等を行った。

  第1部は、アートの現場に着目し、「デジタルアーカイブの未来の可能性」をテーマに、森山朋絵氏(東京都現代美術館学芸員)による基調講演、森山氏と大向一輝氏(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)による対談、デジタルアーカイブジャパン・アワードの表彰を行った。

  基調講演では、「アートとの協働―来たるべきデジタルアーカイブに向けて」をテーマに、森山氏のメディア芸術キュレーターとしての豊富な経験に基づき、メディアアート・メディア芸術のとらえ方と歴史を踏まえたデジタルアーカイブの重要性等について、多様な実例を交えての話があった。

  森山氏の講演内容を受けて、大向氏との対談では、メディア芸術キュレーターの役割やデジタルアーカイブの課題と未来について、深い議論が交わされた。「記憶」を未来へつなぐデジタルアーカイブの重要性や、その実現に向けた多様な主体間の協働、キュレーターの能動的な役割のあり方等について、示唆に富む内容となった。

  第1部の最後では、デジタルアーカイブの拡充や利活用の促進に積極的に取り組み、優れた活動を行っているアーカイブ機関及び活用者等を顕彰する「デジタルアーカイブジャパン・アワード2026」の表彰式を行い、一般社団法人EPAD、株式会社ハムスター・株式会社バンダイナムコエンターテインメント、KYOTO地域文化をつなぐミュージアムプロジェクト実行委員会、鳥取県立図書館、まちの記憶を残し隊の5機関を表彰した。

  第2部は、「デジタルアーカイブの現在」の観点から、デジタルアーカイブの構築や活用等に積極的に取り組んでいるジャパンサーチ連携機関や活用者より、事業や取組の概要、ジャパンサーチの活用事例等について発表が行われた。

  愛知県図書館は、貴重な地域資料を収録した「絵図の世界」「貴重和本デジタルライブラリー」「絵はがきコレクション」「画像コレクション」の4つのデジタルアーカイブのうち、後者3つを「愛知県図書館デジタルアーカイブ」へ統合することで、利便性の向上やジャパンサーチとの連携などに繋げている。

  新潟県立近代美術館・万代島美術館からは、2か所の県立美術館をまたいでデータベースを整備・作成して一般公開し、ジャパンサーチと連携するまでの経緯や今後の課題について説明があった。

  宮城県では、県内自治体の様々な施設に散らばって保存されている民俗資料について、「宮城民俗コモンズ」として県内各地の民俗担当職員が協働することにより、データベース「宮城の民具」において統合的な利活用を実現している。

  福岡市博物館は、ジャパンサーチのギャラリー機能を活用し、鑑賞型ギャラリー、参加型ギャラリー、活動型ギャラリーなど様々な形の興味をひくオンライン展示を作成することにより、収蔵資料の有効な利活用を目指している。

  髙橋傑氏(都留文科大学教養学部地域社会学科教授)からは、中学校・高等学校の授業において、ジャパンサーチの利活用機能を活用して自分だけのオンライン上の博物館を生徒に作ってもらう取組について紹介があった。

  第3部は、「デジタルアーカイブを通じた過去のクローズアップ:昭和100年を迎えて」をテーマに、相模原市と公益財団法人三井文庫(以下「三井文庫」)による活用事例の紹介と、高野明彦氏(国立情報学研究所名誉教授)を招いての三者によるトークセッションを行った。

  このうち相模原市では、「知る・学ぶ・楽しむ@さがみはら」をテーマにデジタルアーカイブを構築しており、市内の様々な部署が連携をして、多角的な視点から相模原を知るコンテンツを作成している。組織全体でデジタルアーカイブを推進する意識を高め、デジタルアーカイブのさらなる拡充を目指していく展望が語られた。

  三井文庫では、所蔵する近世の三井家資料や近代以降の三井グループ企業資料をオンラインで公開するプラットフォームを構築し、デジタルアーカイブに取り組んでおり、昭和初期のブラジルコーヒー宣伝販売に関する資料を例に、デジタルアーカイブを活用することで、新たな発見や知の共有を促進する可能性が示された。

  相模原市と三井文庫の発表を受けて、高野氏を交えたトークセッションでは、両アーカイブの共通課題や今後の可能性について議論された。多くの人に活用され、フィードバック等を反映しながらデジタルアーカイブに取り組んでいく方向性が語られた。

  各プログラムの企画・運営においては、過去・現在・未来をつなぐデジタルアーカイブの様々な役割につき、多様で異なる現場の実践事例をもとに充実した紹介が行われるよう配慮した。

  本イベントが、アーカイブ機関の関係者や、デジタルアーカイブをこれから活用したいと検討している方にとって、今後の活動や取組の一助となることを願っている。

Ref:
“デジタルアーカイブフェス2026―デジタルアーカイブの時代の交差点―”. 内閣官房.
https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/titeki2/forum/index.html
“デジタルアーカイブジャパン・アワード(DAJアワード)2026”. JAPAN SEARCH.
https://jpsearch.go.jp/daj-award-2026
“デジタルアーカイブ”. 愛知県図書館.
https://www.aichi-pref-library.jp/s005/search/040/index.html
新潟県立近代美術館・万代島美術館所蔵品データベース.
https://jmapps.ne.jp/niigata_kinbi_banbi/
“宮城の民具”. 東北歴史博物館.
https://www.thm.pref.miyagi.jp/database/miyagibunkazai/mingu/
“アーカイブズ”. 福岡市博物館.
https://museum.city.fukuoka.jp/archives/
“慶應義塾普通部プロジェクト”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/project/kf_keio
“慶應義塾高等学校プロジェクト”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/project/hs_keio
“慶應義塾普通部1年生「自分の博物館をつくろう」作品集”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/gallery/kf_keio-XDAao9jdk63
さがみはらデジタルアーカイブ.
https://digital-sagamihara.jp/digital-archive
“三井文庫デジタルアーカイブご利用案内”. 三井文庫(史料館).
https://mitsui-bunko.or.jp/archives/archives/digital-archives/