E2920 – 全国書誌のアクセシビリティに関する調査結果報告書

カレントアウェアネス-E

No.532 2026.10.15

 

 E2920

全国書誌のアクセシビリティに関する調査結果報告書

国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課・村上一恵(むらかみかずえ)

 

●はじめに

  図書館は、利用者に所蔵資料や情報へのアクセスを提供することを責務としている。障害のある人々を含め、誰もが資料や情報に的確にアクセスできるようにするためには、それらのアクセシビリティに関する情報を作成し提供することが重要である。

  全国書誌とは「ある一国で刊行されたすべての出版物を網羅的、包括的に収録した書誌」(『図書館情報学用語辞典』第5版)と定義され、障害のある人々が利用しやすい、アクセシブルな形式の資料もその対象に含まれることが想定される。全国書誌の構築及び維持管理を支援する活動を行っている国際図書館連盟(IFLA)書誌分科会は、2025年5月から7月にかけて、全国書誌作成機関におけるアクセシビリティ・メタデータについてアンケート調査を行い、全国書誌作成機関等32機関から回答を得た。2026年7月には調査結果をまとめ、「全国書誌のアクセシビリティに関する調査:結果報告書」を公開した。本稿では結果報告書の主な内容について紹介する。

  なお、IFLAアクセシビリティ・メタデータ・ネットワークによる「アクセシビリティ・メタデータ:宣言および原則」では、アクセシビリティ・メタデータを「資料のアクセシビリティに関する情報」と定義し、スクリーンリーダー対応や代替テキスト等の機能に関する情報のほか、注意情報やアクセシビリティ標準への準拠状況等の情報も含まれ得るとしている。本結果報告書でも同様に「アクセシビリティ・メタデータ」という用語を用いる。EPUBのアクセシビリティについての国際規格ISO/IEC 23761:2021及びその国内規格であるJIS X 23761:2022(E2554参照)で言及される「アクセシビリティ・メタデータ」の範囲よりも広い点に注意が必要である。

●アクセシビリティ・メタデータの根拠となる指針等

  アクセシビリティ・メタデータに関する取組の基礎となる指針等については、多くの機関が、欧州アクセシビリティ指令、マラケシュ条約、各国の国内法等のほか、W3Cの勧告“Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)”等の技術的な指針等に即していると回答した。

  アクセシビリティ・メタデータの記録方針を策定していると回答した機関は19%で、その多くは調整・作成中であるとしている。策定された方針は主に各機関のウェブサイトで公開されているが、アクセシビリティ・メタデータの具体的な記録というよりは、アクセシビリティ全般の促進を目的としたものとなっている。

●全国書誌に含まれるアクセシブルな形式の資料とアクセシビリティ・メタデータ

  アクセシブルな形式の資料を全国書誌に含めていると回答した機関は81%で、点字資料や大活字資料のほか、アクセシブルな電子書籍も含まれている。一方、これらの資料について、アクセシビリティ機能など、アクセシビリティ・メタデータを書誌データに記録している、あるいは将来的に記録する予定である、と報告したのは53%であった。

  アクセシビリティ・メタデータの記録において、Schema.orgやONIXといった、出版セクター等でも使用されている国際的なメタデータ標準語彙を使用していると回答した機関は、合わせて30%に過ぎず、64%の機関は、資料の形態やアクセス方法についてあらかじめ定義された語彙を全く使用していない。

●関係機関等との連携協力

  全国書誌作成機関と関係機関とのアクセシビリティ・メタデータの交換については、50%の機関が何らかの枠組みを導入していると回答した。また、44%の機関が、図書館におけるアクセシビリティ・メタデータに関連する他の組織やイニシアチブと協力している。

  アクセシビリティ・メタデータの主なユーザーは、障害のある利用者と想定される。47%の機関が、アクセシビリティに関するニーズ把握のため、障害のある利用者に参画してもらっていると回答した。具体的な取組としては、直接的なフィードバックやアンケート等を通じた、ユーザーインターフェースの改善等が挙げられた。

●アクセシビリティ・メタデータに関する課題

  78%の機関が、認識、研修、リソースの不足を挙げた。また、現行のシステムやワークフロー内の制約、標準的な語彙集の欠如等も課題として挙がった。

  どのような情報やガイダンスが必要か、という質問に対しての回答からは、アクセシビリティ機能を記述するための標準語彙及びそれについてのガイダンスの提供が、最も緊急の要件であることがうかがえる。計画を策定するためのガイダンスも含め、アクセシビリティ・メタデータの実践に関する情報へのニーズも寄せられた。

  政策レベルにおいてアクセシビリティ・メタデータの重要性が認識されている一方で、現場での実践とは乖離があり、作成機関によりメタデータの記録に差異が生じ得る点も指摘された。

●おわりに

  アクセシブルな形式の資料を全国書誌の収録対象に含めている機関が多かった一方、アクセシビリティ・メタデータに関する方針を策定し(または作成中であり)、実際にアクセシビリティ・メタデータを記録している機関は少数であることが、本調査で明らかとなった。結果報告書では、全国書誌作成機関と、特に出版セクターとのメタデータ連携及び協力、利用者との継続的な対話が提案されている。誰もが資料や情報にアクセスできるよう、アクセシビリティ・メタデータを着実に記録していくためには、標準語彙等のインフラ整備はもちろん、関係機関との連携協力を通じた効率的なメタデータ作成フローの確立が望まれる。

Ref:
Niininen, Satu; Ouf, Rehab; Higgins, Rebecca et al. IFLA Bibliography Section. Survey on Accessibility in National Bibliographies: Report of Results. IFLA. 2026, 31p.
https://repository.ifla.org/handle/20.500.14598/7156
“Accessibility Metadata Network”. IFLA.
https://www.ifla.org/units/accessibility-metadata-network/
Behrens, Renate; Bohn, Anna; Brousseau, Hélène et al. IFLA Accessibility Metadata Network. Accessibility Metadata: Statement and Principles. IFLA. 2026, 7p.
https://repository.ifla.org/handle/20.500.14598/7095
“Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2”. World Wide Web Consortium.
https://www.w3.org/TR/2024/REC-WCAG22-20241212/
濱野恵. EUのアクセシビリティ指令. 外国の立法. 2021, (287), p. 65-103.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11643920
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https://current.ndl.go.jp/e2904
角田昌太郎. IFLA視聴覚資料ガイドラインの改訂. カレントアウェアネス-E. 2026, (527), E2901.
https://current.ndl.go.jp/e2901
田中俊洋. 国際図書館連盟(IFLA),マラケシュ条約の実務ガイドを公開. カレントアウェアネス-E. 2018, (360), E2090.
https://current.ndl.go.jp/e2090