カレントアウェアネス-E
No.532 2026.10.15
E2919
豊かなコミュニティのための公共図書館サービス(米国)2025年版
国立国会図書館関西館文献提供課・絹川紘平(きぬがわこうへい)
2026年6月、米国公共図書館協会(PLA)は、豊かなコミュニティのための公共図書館サービスに関する調査報告書の2025年版にあたる“Public Library Services for Strong Communities Report: Results from the 2025 PLA Annual Survey”を公開した。
初回の調査は2022年に行われ(E2661参照)、今回の調査が2回目となる。調査は2025年9月から12月にかけて全米の公共図書館を対象としてアンケート形式で実施され、その内の20.6%にあたる1,896館の図書館から回答があった。
設問の項目は前回と同様にコミュニティのニーズ、サービス、プログラム、パートナーシップ、施設・設備、評価の六つがあるが、一部の項目では新たな設問や選択肢が見られる。本稿ではこの報告書の概要を紹介したい。
●コミュニティのニーズ
多くの図書館が、ニーズに応えるために現在実施している取組として、リテラシーと教育面での取組(84.1%)、情報アクセスの公平性と格差是正(66.8%)、アクセシビリティと障害者支援(63.8%)を挙げている。
回答館の立地別に見ると、実施率上位二つの取組は全体で見た場合と変わらないが、3番目に多く実施している取組は、都市部の図書館では経済発展と求職者支援、郊外では公衆衛生とウェルビーイングとなっており、差が見られる。
このほか、調査では過去3年間でコミュニティのニーズがどう変化し、それに対してどのような図書館サービスやプログラム等を実施したか自由記述欄を設けた。報告書ではその傾向を分析したものがまとめられている。
●サービス
図書館では“Formal”(公式)/“Informal”(非公式)の両面で行政サービス・住民への支援を展開しているが、多くは非公式な形でサービスが提供されている。非公式なサービスとは、図書館が特に計画・周知はしていないが、必要に応じて、あるいは依頼により支援を行うサービスである。
行政サービスでは今回から退役軍人に向けたサービスを実施しているかの選択肢が新設された。図書館全体の55.5%で何らかの形でサービスを提供していることが明らかになったが、非公式で提供される場合が多いという。
住民への支援としては高齢者(65歳以上)向けサービスと来館困難者向けサービスの選択肢が新設された。前者は80.4%、後者は63.1%の図書館で何らかのサービスを提供していることがわかった。このほか食料不安の改善に関するサービスを実施する図書館は前回調査時の46.4%から56%へと増加している。
●プログラム
報告書では、年齢層別に図書館が提供しているプログラムの内容をまとめている。
今回の調査では高齢者に向けたプログラムに関する設問が新たに加わった。図書館全体の83.3%において少なくとも一つ以上の高齢者を対象としたプログラムを提供している。
その具体的な取組として、デジタルリテラシーとテクノロジー支援(70.5%)、認知機能の健康と社会的つながり(51.4%)、金融リテラシー(44.8%)等が挙げられる。
●パートナーシップ
図書館は共通目標を持つ外部団体と協力することで、双方にメリットのある形でコミュニティのニーズに応えやすくなる。
今回は、連携相手として、乳幼児の保育・教育施設と高齢者支援団体が新たに選択肢に加わった。前者は81.5%、後者は73%の図書館が連携を行っている。
●施設・設備
前回調査の2022年以降で新設または大規模な改修を実施した図書館は24.3%であった。
移動図書館やアウトリーチのための乗り物に関する設問では、前回調査で自由記述に挙げられていた自転車“Book Bike”の選択肢が追加され、5.1%の図書館(都市部では16.3%)が導入していることが明らかとなった。
また、緊急時の指定に関する設問では猛暑・厳寒時の避難施設として機能していると回答した図書館が前回調査より8.2%増加し、44.7%となった。猛暑による健康被害のリスクが増す中で、今後もその需要の増加が見込まれると指摘している。
●評価
前回調査と同様にアウトプット評価、コミュニティニーズの評価、利用者満足度、成果測定の4種類について調査を行った。アウトプット評価(実施したプログラム数やその参加者数等、図書館がどの程度活動しているか示すもの)が最も多くの図書館で用いられているのは前回と同様である(90.2%)。一方で、成果測定(図書館のプログラムへの参加やサービスの利用によって個人に生じた変化を定量的あるいは定性的に測ること)を導入している図書館は25.5%に留まり、前回より3.5%減となっている。
●さいごに
以上の通り調査結果を概観した。巻末には詳細結果が掲載されており、図書館の立地別によるニーズや傾向の違い等も見られ、示唆に富んでいる。報告書本文の方も参照されたい。
なお「プログラム」等でも触れたが、今回の調査では高齢者に関する設問や選択肢が新たに加わった。
本調査とは別に、PLAでは米国図書館協会(ALA)等と共同で“Aging Together”プロジェクトを通じて高齢者向けの図書館プログラムの現状等の分析が進められている。2026年3月には“Aging Together: Landscape Report”(中間報告に相当)が公開され、2027年2月には最終報告書の公開が予定されている。こちらも併せて動向を注視したい。
Ref:
“New PLA data reveals public libraries boosted support for food security, health and wellness in 2025”. ALA. 2026-06-23.
https://www.ala.org/news/2026/06/new-pla-data-reveals-public-libraries-boosted-support-food-security-health-and
Public Library Services for Strong Communities Report: Results from the 2025 PLA Annual Survey. PLA, 2026, 51p.
https://www.ala.org/sites/default/files/2026-06/PLA_Services_Report_2026.pdf
Public Library Services for Strong Communities Report: Results from the 2022 PLA Annual Survey. PLA, 2023, 53p.
https://www.ala.org/pla/sites/ala.org.pla/files/content/data/PLA_Services_Survey_Report_2023.pdf
ALA releases landscape report on the current state of library programs for older adults. ALA. 2026-03-24.
https://www.ala.org/news/2026/03/ala-releases-landscape-report-current-state-library-programs-older-adults
Aging Together: Landscape Report. ALA, 2026, 44p.
https://programminglibrarian.org/sites/default/files/2026-03/Aging_Together_Landscape_Report.pdf
西口真梨奈. 豊かなコミュニティのための公共図書館サービス(米国). カレントアウェアネス-E. 2024, (472), E2661.
https://current.ndl.go.jp/e2661
