カレントアウェアネス-E
No.531 2026.10.01
E2912
デジタルデトックスに向けた多気町立図書館の取組み:スクリーンから顔を上げて見えるもの
多気町立多気図書館・髙橋直子(たかはしなおこ)
●デジタルデトックスコーナー
多気町立多気図書館(三重県)では、2026年度がスタートし慌ただしかった4月も終わり5月に突入するタイミングで、デジタルデトックスコーナーをホールに設置した。「スマホやテレビなどから離れ、その時間家族で一緒に何かをしませんか?」という見出しとともに参考となる書籍を用意した。さらに「デジタルデトックスカード」を一緒に置き、自由に持って行ってもらえるようにした。このカードは一日の中で自分がどれだけデジタル機器に触れているのか認識し、スクリーンタイムを減らすことにチャレンジしてみよう!というものだ。1日のうちデジタル機器に触れない時間を「30分・1時間・2時間・全く見ない」の4コースの中から選び、成功した日に色を塗っていく。これは『「メディア漬け」で壊れる子どもたち』(清川輝基・内海裕美共著、少年写真新聞社)のアウトメディアチャレンジシートを参考に用意した。
コーナーには、デジタル機器が身体に与える影響についての書籍や、アナログ生活に役立つものの他、読書や外遊び、料理などスクリーンタイムから離れた時間を家族で一緒に過ごすために参考となる書籍を用意した。また併せて、「逆タイパ」コーナーも設置した。忙しい日々を過ごす中で何でも時短やタイパ優先になりがちだが、そうではなく、敢えてじっくり物事に取り組んでみようと、野菜作りや燻製、金継ぎなどの、時間をかけ丁寧に取り組めるものに関する書籍を一緒に展示した。
我々の生活に欠かせなくなってきているスマホやタブレットなどのデジタル機器。学校でも一人一台のタブレットが支給されている。その一方でデジタル機器による身体の不調も伝えられる中、それでもデジタル機器を完全にシャットアウトするのは現実的ではなくなってきた。そこで当町の図書館では、完全に切り離すのではなく「それらに振り回されずうまく使いこなそう。」と、あらゆる場で提案している。そのための一つとして設置したのが、今回のデジタルデトックスコーナーである。
●当町の図書館の取組み
当町の図書館では、子どもたちが心身ともに健やかに活き活きと育つことを願い、様々な取組みを行ってきた。どれも子どもたちの想像力と創造力を育み、身体で体感すること、手を使う事を重視し、必ず本と繋げる工夫をしている。またその一環としてスマホが普及するずっと前より、デジタル関連機器との上手な関わり方について考えてきた。2013年にはNPO法人子どもとメディア代表理事の故・清川輝基氏に来てもらい、「「メディア漬け」で壊れる子どもたち~子どもたちのために今なすべきこと~」というテーマで講演してもらった。講演を受け、改めてデジタルメディアとの接し方について深く考える機会となり、我々職員も関連本を読むなどをして自己研鑽を続けている。それらを基に公共図書館に限らず、様々な場で発信している。
デジタル機器への接し方は子どもの成長にも大きく影響している。忙しさの中子育てをスマホやテレビに頼ってしまうという声もよく聞くが、当町の図書館ではブックスタートの場で、「スマホに触れさせるよりも、お父さんお母さんの生の声でぜひ本を読んでください。その時間が親御さんにとってもリラックスできる時間になり親子の愛着関係にもつながりますよ。」と司書が個別に赤ちゃんの保護者に伝えている。
また当町内各小中学校では学校司書が常駐しており、子どもたちの成長過程に合わせ日々寄り添って読書サポートを行っている。それと同時に、調べ学習の際にはタブレットと本を両立して使えるよう教員へ必要な資料を提供し授業支援を行っている。
●まとめ
このように、当町の図書館や各学校では、様々な形でデジタル機器への接し方について考えている。今回のデジタルデトックスコーナーもその活動の一つだ。今回並べた書籍も多数貸出しがあり、大いに反響があった。このコーナーを目にし、デジタルデトックスカードに取り組んだ人が、普段どれだけ自分がデジタル機器に時間を取られているかを認識し、その時間を家族時間や外遊び等にあてるようになればと思う。特に子どもは自分自身の体を動かし、体験、没頭するということをして欲しい。
スマホやゲームなど楽しい娯楽があふれ、調べものもAIが助けてくれる。非常に便利である。しかし、それらばかりに偏るのではなく、複数の資料を見比べ、信憑性のある解にたどり着く力と、紙の本を読み前頭葉を働かせ、物語を読んでワクワクドキドキする想像力をつけていってほしいと切に願う。今後も継続して様々な形で、デジタル機器との上手な向き合い方を考え投げかけていきたい。
Ref:
多気町立図書館・郷土資料館.
https://www.town.taki.mie.jp/library/index.html
清川輝基, 内海裕美共著. 「メディア漬け」で壊れる子どもたち : 子どもたちのために今なすべきこと. 少年写真新聞社, 2009, 167p.
特定非営利活動法人子どもとメディア.
https://komedia.or.jp/
“デジタルから離れる時間を 三重・多気図書館が取り組む 心身疲労やストレス軽減”. 夕刊三重電子版. 2026-05-22.
https://yomotto.jp/2026/05/22/4029608/
