E2913 – 御殿場市立図書館「ほんてらす」の紹介

カレントアウェアネス-E

No.531 2026.10.01

 

 E2913

御殿場市立図書館「ほんてらす」の紹介

御殿場市教育委員会教育施設課・小原元太郎(おばらげんたろう)

 

●はじめに

  御殿場市(静岡県)は、霊峰富士の東麓に位置する、人口8万人余りの都市である。本市では、図書館の耐震強度不足や蔵書の増加によるスペースの不足、さらには民俗資料収蔵庫の老朽化等の課題を解決するため、郷土資料館の機能も兼ね備えた新御殿場市立図書館「ほんてらす」を整備し、2026年7月19日に開館した。

  • 階数:地上2階
  • 構造:鉄筋コンクリート造、鉄骨造(混構造)
  • 延床面積:4,298㎡
  • 蔵書数:29.2万冊(開架:16.8万冊、閉架:12.4万冊)

●設計コンセプト

  風土と共にあった御殿場の伝統的な古民家が持つ4つの特徴「シセキ」「四方屋根」「箱棟」「コマ」を取り入れ、「みんなが集えるリビング」を基本コンセプトとした。

  • シセキ:富士山から吹き降ろす冷気を避けるための防風林を指す。本施設では敷地内の既存樹を最大限活用し、自然環境を活かした計画とした。
  • 四方屋根:積雪対策として積雪荷重を均等に分散させる屋根形状を指し、本施設でも応用している。また、富士山や周囲の山並みの稜線に調和するフォルムとなっている。
  • 箱棟:換気用の屋根構造を指し、本施設も二重屋根とし、通気および採光を有効に取り入れている。また四方屋根と併せて、美しい景観と調和したランドスケープを形成している。
  • コマ:居間の呼び名であり、本施設ではテーマ別にこのコマを複数設けた。それぞれのコマは多様な居場所を形成し、利用者が目的に合わせて自由で快適に過ごせる空間となっている。

●建築的特徴

  配置計画では、富士山を軸として建物を配置し、景観との調和を図っている。特に内部のカーテンウォールは富士山を借景として取り入れ、利用者が雄大な富士を望みながら本を楽しむことができる空間を演出している。

  本施設では随所に「六角形」をモチーフとして取り入れている。屋根や館内サイン、ドアの取手に至るまで六角形である。このデザインは御殿場市誕生以前の旧6町村を象徴するものであり、市の歴史と成り立ちを表現している。

  館内は大屋根に包まれたワンフロア型の空間に、一般書架と児童書架を放射線状に配置し、その外周部にコマを点在させている。各書架は、開架中心部をNDC配架、各コマをテーマ別配架とし、本の見つけやすさを基本としつつ、目的ではない本との偶然の出会いを創出し、利用者が知見を広げられる設えとしている。各コマは「文学のコマ」「えほんのコマ」「芸術のコマ」といったように各テーマに関連する書籍を配架し、それぞれのテーマに合わせて什器等の設えを計画することで、特色ある空間を生み出している。

●照明的特徴

  館内では、利用者が時間や季節の移ろいを感じられるようサーカディアン照明を採用している。この照明システムでは、朝から夜までの時間ごとの光の色が富士山の風景に基づいて変化する。午前中は朝焼けの「曙富士」色、午後は澄んだ昼空の「青富士」色、夕方は夕焼けの「赤富士」色、夜は静かな夜空の「月富士」色というように、時の変化を照明によって表現している。これにより、自然のリズムを意識させ、時間を意識することなく体内時計が整い、快適に過ごせる空間を創出している。

●構造的特徴

  本施設の屋根架構は、鉄骨造による幅約60mもの空間内に柱がない無柱空間構造である。この特徴により、広々としたワンフロア型の空間を可能としている。また、箱棟屋根は鉄骨を三角形で細かく組んだ山形トラス梁を採用し、脚部にテンションリングを伴うことで柱に頼らず荷重を支える自己完結型構造としている。非常に複雑な架構形式であったが、建築物の3Dモデル内における部材に属性データを紐づけたシステムであるBuilding Information Modeling(BIM)による高精度な鉄骨図の作図技術、仕口検討によって設計から施工までの一貫性が確保されたことで実現することができた。

●郷土資料館機能の併設

  本施設のもう一つ重要な特徴は、郷土資料館機能を併設した点である。蔵書スペースと資料展示スペースの融合による新しい学びの場の創出を目的とした。エントランスホールにはタッチして操作することで御殿場市の情報を閲覧できるデジタルコンテンツなど、直感的に遊びながら学べる装置を設け、利用者にとってのふるさとへの「気づき」のきっかけを提供し、そこからさらに深い学びや探求へとつなげる知の連鎖を図っている。

●おわりに

  風土と伝統を積極的に取り込んだ新御殿場市立図書館「ほんてらす」は、単なる図書館機能に留まらず、郷土資料館としての役割や、市民が集える公共空間としても高い価値を提供している。2026年7月に開館したばかりの若い施設ではあるが、今後運営していきながら利用者と共に育ち、未知に出会え、未来を創る拠点を目指す。

Ref:
御殿場市立図書館ほんてらす.
https://gotemba-library.jp
御殿場市史編さん委員会編. “第4章 衣・食・住, 第3節 住居”. 御殿場市史別巻1 (考古・民俗編). 御殿場市, 1982, p. 519-562.
https://dl.ndl.go.jp/pid/9538891