E2914 – 防災専門図書館70年の歩みと災害史

カレントアウェアネス-E

No.531 2026.10.01

 

 E2914

防災専門図書館70年の歩みと災害史

全国市有物件災害共済会防災専門図書館・矢野陽子(やのようこ)

 

  1956年7月、日本で唯一の防災・災害の専門図書館である「防災専門図書館」(以下「当館」)が、東京都千代田区で開設された。そして、2026年7月、当館は開設70年を迎え、企画展「記録をたどり、未来に備える―防災専門図書館70年の歩みと災害史」を開催中である(会期:2027年7月30日まで)。

  本稿では企画展になぞらえながら、当館70年の歩みをたどり、その時々に発生した主な災害についても併記する。なお、各災害の資料は、いずれも当館で閲覧可能である。

●1956年7月6日 防災専門図書館開設

  運営母体である全国市有物件災害共済会(以下「共済会」)が収集した約2,000冊の図書をもとに、日本初の防災・災害の専門図書館として開設された。十進分類法を利用した独自分類を採用し、自然災害に関係する資料を000災害一般、100火災、200風水害・雪害、300地震・噴火・津波の各分類に排列し、人為災害関連の資料は、400交通災害、500農業災害、600工・鉱業災害、700公害、800戦災に分類している。また、当館の主題との関連が比較的薄い資料は、900その他一般として所蔵している。
・当時の災害:水俣病の公式確認(1956年5月1日)

●1959年3月 東京都千代田区平河町へ移転

  千代田区日比谷公園の市政会館内にあった共済会と当館は、現在の所在地である同区平河町に建設した日本都市センター会館内へ移転した。当時の当館スタッフは2人。自然災害の増加や都市公害の激化につれ、利用者数・蔵書数も増え、1962年には1万冊を超えた。
・当時の災害:伊勢湾台風(1959年9月26日~)、三河島列車衝突事故(1962年5月3日)

●1967年6月 『公害関係図書目録』刊行開始

  公害関係資料の利用が多かったため目録を刊行。以後、2005年度まで追録を刊行した(他の分類は1977-89年に発行)。
・当時の災害:十勝沖地震(1968年5月16日)、飛騨川バス転落事故(同年8月18日)

●1995年 蔵書10万冊突破

  約2,000冊から始まった蔵書は、約40年で10万冊を超えた(70年目では約17万4,000冊)。
・当時の災害:阪神・淡路大震災(1995年1月17日)

●1998年 日本都市センター会館の建て替え

  日本都市センター会館の建て替えのため一時休館し、1999年6月に再開。カード目録のデータベース化に着手し、2006年10月からOPACを公開した。
・当時の災害:ナホトカ号重油流出事故(1997年1月2日~)

●2010年 ウェブコンテンツ「火災・地震関係かわら版」をホームページで公開

  所蔵する江戸時代のかわら版90点をデジタル化し、ホームページで公開。以後、自治体発行の災害資料を中心にデジタル化・公開を続けている。データは、利用申請に応じて無料提供している。
・当時の災害:中国・九州北部豪雨(2009年7月19日~)、東日本大震災(2011年3月11日)

●2012年 防災専門図書館あり方検討委員会

  共済会の公益法人化を見据え、公益目的事業としての図書館のあり方を外部有識者とともに検討した。その結果、広く一般の防災意識の向上を図るために、資料の収集と活用について運営の基本方針が決定し、当館の理念を設定した。2016年にはフォローアップ会議を実施した。
・当時の災害:九州北部豪雨(2012年7月11日~)、笹子トンネル天井板崩落事故(同年12月2日)

●2014年度 広報元年

  1990年代以降、利用者数が減少していたが、あり方検討委員会の提言をもとに、利用者獲得を目指し、企画展の開催、図書館総合展への出展、「防災いろはカルタ」作成など様々な広報活動を開始した。その結果、年間200人未満だった来館者数が、1,100人を超えるまでになった(最高1,709人)。2022年3月からはTwitterも開始した。
・当時の災害:広島土砂災害(2014年8月20日)、御嶽山噴火(同年9月27日)

●2020年 新型コロナウイルス感染症対応で休館

  新型コロナウイルスの影響で約2か月半休館。また、非来館型サービスを強化するために、当館の紹介動画を作成しYouTubeに公開した。2021年以降は、企画展を3D-VR映像で撮影しホームページで公開している。
・当時の災害:新型コロナウイルス感染症の感染拡大、令和2年7月豪雨(2020年7月3日~)

●2024年度 オリジナルクリアファイル作成

  防災啓発と当館広報を目的に、所蔵するかわら版を印刷したクリアファイルを制作した。印刷費を募るクラウドファンディングでは22万円を超える寄付が集まった。
・当時の災害:令和6年能登半島地震(2024年1月1日)、八潮市道路陥没事故(2025年1月28日)

  以上、当館の70年にわたる歩みを概観した。この間、日本では数多くの災害が発生し、2026年も令和8年熊本地震や令和8年8月千葉豪雨などの災害が相次いでおり、防災・減災への備えの重要性が改めて認識されている。

  当館は、「防災・災害等に関する資料の収集とその活用・発信を通して、住民のセーフティーネットとして貢献する」という理念を掲げ、その実現を使命としている。過去の災害の記録と教訓を未来へ継承し、人々の命と暮らしを守るための情報を収集・提供する拠点として、これからもその役割を果たしていきたい。

Ref:
“企画展「記録をたどり、未来に備える」を開催します(7月6日~令和9年7月30日)”. 全国市有物件災害共済会. 2026-06-23.
https://city-net.or.jp/8682/
“防災専門図書館”. 全国市有物件災害共済会.
https://city-net.or.jp/products/library/
“デジタルアーカイブ”. 全国市有物件災害共済会.
https://city-net.or.jp/products/library/archive/
“防災専門図書館”. X.
https://x.com/bousai_library
“行ってみよう!日本唯一!! 防災専門図書館”. YouTube. 2020-07-30.
https://www.youtube.com/watch?v=las7fUecuTc
“防災専門図書館探訪”. YouTube. 2021-09-10.
https://www.youtube.com/watch?v=qXbTlJXFMhE
“防災専門図書館探訪 閲覧室編”. YouTube. 2021-09-10.
https://www.youtube.com/watch?v=wgfCpxXSi54
“中林一樹先生と「中林文庫」”. YouTube. 2021-09-10.
https://www.youtube.com/watch?v=tjgqMiuzaos
“企画展の記録(3D-VR映像あり)”. 全国市有物件災害共済会.
https://city-net.or.jp/products/library/memory/