E2889 – 京都精華大学情報館におけるZINEの取り組みと収集方法

カレントアウェアネス-E

No.525 2026.06.25

 

 E2889

京都精華大学情報館におけるZINEの取り組みと収集方法

京都精華大学情報館・中西由加里(なかにしゆかり)

 

  「ZINE(ジン)」と呼ばれる自主出版物が、大手書店でも注目され、取り扱われはじめている。京都精華大学の図書館である情報館では、2025年度からZINEやリトルプレスの収集に力を入れている。本稿では、大手の書籍流通経路にのらない、この出版物を京都精華大学でどのように収集し、利用に供しているかを紹介する。

●ZINEとは

  ZINEは、自分の「伝えたいこと」を自由に綴る個性が詰まった出版物である。ページ数は紙1枚から数十ページに及ぶものまで様々なものがある。女性史研究者でジン・カルチャーの研究者としても知られる村上潔氏によると、ZINEは略語ではなく、マガジン(Magazine)から派生した「ファンジン(Fanzine)」(特定の文化的現象(文学や音楽のジャンルなど)の愛好家が、同じ興味を持つ他の人々の楽しみのために制作する、非専門的かつ非公式な出版物)という言葉から独立して生まれたもので、「有志による非営利・少部数の自主制作出版物」と定義される。ZINEは、マイノリティの声やポリティカルな主張を届けるための表現手段として育まれたとされ、個人の記録であると同時に、弱者の表現を守るための場でもあり、マイノリティ・スタディーズの観点からも重要な存在といえる。

●ZINEの収集に向けた取り組み

  本学では、表現のひとつとして、学生がZINEを制作することが少なくないため、情報館としてもアーカイブ的に扱っていこうと考え、2025年度より収集を開始した。

  ZINEは、非営利指向でごく個人的なこだわりに突き動かされた小規模な独立系出版物であるため、一般的な手段では収集が困難である。このため当館では、2025年度は試験的に7月、9月、11月、1月の計4回、情報館内コミュニティスペースにて、「ZINE交換会」を実施し、ZINEを収集する手段とした。ZINEイベントは、基本的に「交換」を前提とすることが多く、自分のZINEを持ち寄り、ほかの人のZINEと手渡しで交換する。そのやりとり自体が、ZINE文化の楽しさといえる。いわゆる「文学フリマ」や「ZINEフェス」のようなものである。情報館での出展は無料とし、出展者には出展の基本条件として出展したZINEを1種類1冊納本してもらい、これを1つ目の収集手段とした。

  また、交換会の期間中にZINEにまつわるゲストを招き、トークイベント「ZINE TALK」を2025年度は3回開催した。

  第1回は、『野中モモの「ZINE」:小さなわたしのメディアを作る』などの著者である野中モモ氏と、ZINE制作において独特な風合いが人気のリソグラフ印刷の工房「hand saw press Kyoto」を主宰する小田晶房氏により、日本における「ZINE」カルチャーのパースペクティブや印刷機のコモンズ的運用が生み出すコミュニティの可能性などについて講演が行われた。

  第2回は、大阪で古本と印刷を扱う「ぽんつく堂」を主宰していた六野明日香氏と、神戸で文芸誌『オフショア』を発行する山本佳奈子氏を招いた。ZINEをつくり始めたきっかけや印刷の工夫、ZINEが商業的に注目を集めつつあるなかで、どのように弱者のための表現手段としてのZINE文化を守っていくか、という課題について講演が行われ、参加者との積極的な意見交換がなされた。

  第3回は、前述の村上潔氏により、大学図書館が「周縁化されたコミュニティの声」たるZINEとどのように向き合えばよいのか、その限界と可能性について講演が行われた。

  これらの「ZINE TALK」のゲストにおすすめZINEの選書リストを提出いただき、購入することを2つ目の収集手段とした。リストアップされたZINEのうち、ウェブサイトから購入できるものは直接購入したが、流通経路に乗らない一部分のZINEはゲストに代理で購入してきてもらい、収集した。

●ZINEの整理方法

  受入、整理方法としては、図書館システムには登録せず、受入年度+通番を付与し、リストで管理する形をとっている。またZINEは形態が多様なため、自立する形態のものは単独で装備し配架するが、1枚の紙を折ったようなものやページ数の少ない中綴じしたものなど、紛れやすく自立しないものについては、クリアポケットに入れた状態でファイリングし、ZINEコーナーを設けて並べることとした。

  2025年度末時点でZINEのコレクションは99点となっており、2026年度も引き続きZINE交換会およびZINE TALKを実施し、ZINEの収集を積極的に行い、芸術・表現を学ぶ学生への支援に役立てていきたいと考えている。

Ref:
京都精華大学. “京都精華大学情報館、ZINE収集はじめました”. note. 2025-10-02.
https://note.com/kyotoseika/n/n25006bfbf90c
村上潔. “大学図書館はいかにしてジンカルチャーのエートスを保全しうるか:限界を認識し可能性を模索する”. arsvi.com. 2026-02-15.
https://www.arsvi.com/2020/20251129mk.htm
村上潔. ジン・カルチャーの現在的展開とその意義:フェミニスト・コミュニティ・アクティヴィズムの視点からの展望. 立命館言語文化研究. 2022, 33(3), p. 39-52.
https://doi.org/10.34382/00016841
村上潔. “ジン[Zine]についての簡潔な解説【第7稿】”. arsvi.com. 2026-06-18.
https://www.arsvi.com/2010/20180906mk.htm
文学フリマ.
https://bunfree.net/
“初めてZINEフェスに出展する方向けの案内ページ”. BOOK CULTURE CLUB(シェア型本屋・無人本屋・リソスタジオを運営). 2025-01-05.
https://note.com/bookcultureclub/n/nc219cc2febb8