E2857 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI 2025)

カレントアウェアネス-E

No.516 2026.01.15

 

 E2857

ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI 2025)

国立国会図書館電子情報部電子情報流通課・高橋洸介(たかはしこうすけ)

 

  2025年10月22日から25日まで、「ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議」(DCMI;E2668ほか参照)がスペインのバルセロナ大学で開催され、国立国会図書館(NDL)から筆者が参加した。

  2025年の会議(DCMI 2025)は「メタデータを中心に:人類の知識とAIイノベーションを橋渡しする」((Meta)data at the Core: Bridging Human Knowledge and AI Innovation)をテーマとし、AIの発展が図書館やメタデータにもたらす影響や、BIBFRAME(E1386CA1837参照)やLinked Open Data(LOD;CA1746参照)といったダブリンコア以外も含む各種メタデータに関する発表が行われた。参加者は、主に欧米・アジア各国の図書館関係者やデータサイエンティスト等118名であった。以下、筆者が特に興味深く感じた発表について紹介する。

  オープニングの基調講演では、ノルウェー国立図書館のブリグフィエル(Svein Arne Brygfjeld)氏から、AIがもたらす図書館業務及びサービスへの影響について語られた。同館では、AIによる主題書誌収録候補の提案や、デジタル化した新聞の号の区切り位置の識別等の取組を行っており、これらの取組においては、従来の人力によるワークフローはAIによって代替可能であることが示された。このほか、AIによる図書館サービスの例として、AIチャットボットサービス(ルクセンブルク国立図書館)や、AIを活用した自然言語による画像検索の取組(スウェーデン国立図書館)が紹介され、情報資源の発見や識別といった従来のメタデータの役割が、近い将来には縮小していく可能性が示唆された。

  招待講演者の一人、「研究情報のオープン化に関するバルセロナ宣言」(E2777参照)の事務局長であるクレイマー(Bianca Kramer)氏の講演では、研究情報のオープン化の重要性や、AIがもたらすオープンリサーチへの影響が論じられた。クレイマー氏は、現代社会における研究成果の評価が、高額かつ英語圏の論文に偏重している商業データベースに基づいて行われるのは不平等であると指摘し、この解消のために研究情報のオープン化が重要であると主張する。一方で、昨今、大規模言語モデル(LLM)へのコンテンツ提供がビジネスモデルとなりつつあり、出版者がオープンデータベースへのコンテンツ提供を停止するという事態も発生しているという。講演においてクレイマー氏は、AIによるメリットは非常に大きいものの、検討すべき課題も多く、「クリティカルフレンド」(互いの成長にとって有益な指摘や批判をし合う存在)として付き合うべきであると結論づけた。

  招待講演者のEBSCOのボレンシュタイン(Tamir Borensztajn)氏からは、識別子を用いてAIの回答精度を高める取組について紹介された。AIの回答におけるハルシネーション(誤情報の出力)の解決方法の一つとして、RAG(検索拡張生成)を活用し、信頼できる文献から作成したナレッジグラフ(人・場所・概念といった情報とそれらの関係をグラフ構造で表現したもの)を回答プロセスに組み込むこと(グラウンディング)が挙げられる。グラウンディングにWikidata IDやSchema.org URIといった、ウェブ上で関連情報を取得可能なユニーク識別子(UID)を組み込むことで、ユーザーからの指示に多義性を持つ言葉が含まれている場合(例えば「Peanuts」という語には、食べ物を指す場合と同名の漫画作品を指す場合がある)に、ナレッジグラフ内で両者を明確に区別し、概念の曖昧性を解消することが可能であるという。

  同じく招待講演者の米・スタンフォード大学のマシオス(Kalliopi Mathios)氏からは、米国議会図書館(LC)の共同目録プログラム(PCC)が中心となり結成された、BIBFRAME相互運用性グループ(BIBFRAME Interoperability Group:BIG)の活動について報告があった。マシオス氏はBIBFRAMEについて、「永遠に実現しない」「大規模な図書館しか関心がない」「閉じた仕様で変更できない」といった誤解があるとした上で、実際には既に、LCがBIBFRAMEメタデータの提供を開始していること、小規模な機関間でもリソースの共有によるコスト削減が実現でき、GitHubを通して開かれたコミュニティによる改善も可能であること等を指摘した。2025年のBIGの主な活動としては、SHACL(RDFグラフが満たすべき条件を定義したW3C標準)を用いたBIBFRAMEデータ検証ツールの開発と試験運用が紹介された。

  DCMI 2025では、近年のAIの発展が、図書館を取り巻く内外の環境に極めて大きな影響を与えていることが改めて示唆された。なおDCMI 2026は、2026年8月に韓国のソウルで開催される予定である。

Ref:
“DCMI 2025”. Dublin Core.
https://www.dublincore.org/conferences/2025/
“DCMI 2025 Programme”. Dublin Core.
https://www.dublincore.org/conferences/2025/programme/
“DCMI 2025 Conference Proceedings”. DCPapers.
https://dcpapers.dublincore.org/issue/dcmi-2025
“Sami bibliography assistant”. National Library of Norway AI-lab.
https://ai.nb.no/sami-bibliography-assistant/
“Front page detection”. National Library of Norway AI-lab.
https://ai.nb.no/front-page-detection/
“Eluxemburgensia.lu receives new chatbot”. Bibliothèque nationale du Luxembourg.
https://bnl.public.lu/en/a-la-une/actualites/communiques/2023/chatbot-eluxemburgensia.html
Barcelona Declaration on Open Research Information.
https://barcelona-declaration.org/
“Building Trust in AI: Why Grounding in Knowledge Matters”. Charleston Hub. 2025-10-29.
https://www.charleston-hub.com/2025/10/building-trust-in-ai-why-grounding-in-knowledge-matters/
“BIBFRAME Interoperability Group (BIG)”. LYRASIS Wiki.
https://wiki.lyrasis.org/pages/viewpage.action?pageId=249135298
Li, Xiaoli; Mathios, Kalli; Possemato, Tiziana. BIBFRAME Interoperability Group: Tackling Implementation Challenges Across Institutions. 2025, 24p.
https://repository.ifla.org/handle/20.500.14598/3961
“lcnetdev/bibframe-ontology”. GitHub.
https://github.com/lcnetdev/bibframe-ontology
“Shapes Constraint Language (SHACL)”. W3C. 2017-07-20.
https://www.w3.org/TR/shacl/
村尾優子. ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI2023). カレントアウェアネス-E. 2024, (473), E2668.
https://current.ndl.go.jp/e2668
渡邊隆弘. ウェブ時代の新しい書誌データモデル“BIBFRAME”. カレントアウェアネス-E. 2013, (230), E1386.
https://current.ndl.go.jp/e1386
柴田洋子. ウェブで広がる図書館のメタデータを目指して―RDAとBIBFRAME. カレントアウェアネス. 2014, (322), CA1837, p. 17-21.
http://current.ndl.go.jp/ca1837
武田英明. Linked Dataの動向. カレントアウェアネス. 2011, (308), CA1746, p. 8-11.
https://current.ndl.go.jp/ca1746
西岡千文. 研究情報のオープン化に関するバルセロナ宣言とロードマップ. カレントアウェアネス-E. 2025, (498), E2777.
https://current.ndl.go.jp/e2777