E2668 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI2023)

カレントアウェアネス-E

No.473 2024.02.08

 

 E2668

ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI2023)

電子情報部電子情報流通課・村尾優子(むらおゆうこ)

 

  2023年11月6日から9日まで、「ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI2023)」(E2460ほか参照)が韓国大邱広域市の慶北大学校でのオンサイトおよびオンラインのハイブリッド形式により開催された。オンサイトでの開催は2019年以来となる。

  2023年の会議は「メタデータの革新:データ集約型世界における知識の活用」(Metadata Innovation: Enabling Knowledge in a Data-Intensive World)をテーマとし、オンサイトでは68人、オンラインでは56人が参加した。プログラムを概観するだけでも「ダブリンコアとAIの相乗効果」(Synergy between Dublin Core and AI)、「AI時代のメタデータ」(Metadata in the Age of AI)等、メタデータと人工知能(AI)をテーマとするものが多く目に付くが、それ以外の発表や質疑でもAIに関する様々な言及があり、参加者の関心が高いことがうかがえた。以下、オンサイトで参加した筆者が図書館のメタデータに関して特に興味深く感じた発表について紹介する。

  基調講演の一つでは、スウェーデン王立図書館のリンドストロム(Niklas Lindström)氏から、正確だが複雑過ぎてわかりにくい案内標識をたとえとして、メタデータをシンプルに保つことの重要性が語られた。様々な目的を持つ多様な利用者による検索に対応できるメタデータが求められるが、メタデータの項目を増やして過剰に詳細化するのではなく、リンクトデータによって、利用者が必要な時に必要なデータを参照できるかたちが提示された。同様のデータを複数箇所で作成するより、既存のデータがあるならそれを活用する方が効率的と言えるだろう。発表では、Green Metadataやデータの再利用といった表現もあり、メタデータとエコという観点についても考えさせられた。

  Student Forum Awardを受賞したブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のワトソン(B.M. Watson)氏の発表では、図書館員や学者、情報専門家等からなるグループであるTrans Metadata Collective(TMDC)による、トランス(トランスジェンダー)及びジェンダーの多様な人々に関する情報資源の分類や記述を改善するための取組が紹介された。TMDCの取組については“Metadata Best Practices for Trans and Gender Diverse Resources”というタイトルのレポートが公開されている。同レポートでは、分類について、例えば、米国議会図書館件名標目表(LCSH)中のジェンダーに関する件名について、どの語をどのように使用すべきか・使用すべきではないか、記述対象に応じてどのような件名を使用すべきかが具体的に説明されているほか、適切な件名の新設についての提案等も記載があり、発表ではレポートの要点を整理して挙げられていた。

  招待講演の一つでは、カナダを拠点とする非営利団体である全国先住民族知識・言語連合(National Indigenous Knowledge and Language Alliance:NIKLA)の“Respectful Terminology Platform Project”を進めているダルハウジー大学(カナダ)のアリソン=カッサン(Stacy Allison-Cassin)氏から、先住民に関する件名等の用語や記述を、歴史的経緯や当事者の権利を尊重したものにするための取組が紹介された。他のデータとリンクすることによって、一つのデータが参照される範囲が広がり、また、AIの学習データとしても活用されていく中で、メタデータの正確性はより重要になると考えられる。ワトソン、アリソン=カッサン両氏の発表は、メタデータを適切に保っていくための取組として注目すべきものと感じた。

  2023年10月に発表されたエドマンズ(Jeff Edmunds)氏によるBIBFRAME(CA1837参照)の有効性に疑問を呈する論考“BIBFRAME Must Die”は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)のハン(Myung-Ja Han)氏等のMetadata Makerに関するチュートリアルで言及されたほか、会議参加者の間でしばしば話題となっていた。MARCについては、2002年にテナント(Roy Tennant)氏による論考“MARC Must Die”が発表されているが、20年以上経過した現在でも広く活用されている。BIBFRAMEについても引き続きその果たす役割が注目されよう。シンガポール国立図書館委員会の発表では、各種図書館と文書館の様々なデータを変換して統合したシステムの概要と、MARCデータのBIBFRAMEへの変換については更なる試行を予定していることが紹介された。また、スウェーデン王立図書館は、2018年からBIBFRAMEをベースとしたシステムを運用しており、新たな検索システムを準備中である。BIBFRAMEが実装されたシステムの中でどのように活用されるのか、展開を注視したい。

  DCMI2023は、メタデータに関する様々な領域での多様な側面からの取組があることを広く知ることができる大変良い機会となった。

Ref:
“DCMI 2023 Daegu”. Dublin Core.
https://www.dublincore.org/conferences/2023/
“DCMI 2023–Programme”. Dublin Core.
https://www.dublincore.org/conferences/2023/programme/
Trans Metadata Collective.
https://transmetadatacollective.org/
Burns, Jasmine et al. Metadata Best Practices for Trans and Gender Diverse Resources. Zenodo. 2022.
https://zenodo.org/record/6686841
Respectful Terminology Platform Project (RTPP).
https://www.nikla-ancla.com/respectful-terminology
Edmunds, Jeff. BIBFRAME Must Die. 2023.
https://doi.org/10.26207/v18m-0g05
Tennant, Roy. MARC Must Die. Library Journal. 2002.
https://www.libraryjournal.com/story/marc-must-die
町屋大地, 髙橋美知子. ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2021). カレントアウェアネス-E. 2021, (427), E2460.
https://current.ndl.go.jp/e2460
柴田洋子. ウェブで広がる図書館のメタデータを目指して―RDAとBIBFRAME. カレントアウェアネス. 2014, (322), CA1837, p. 17-21.
https://doi.org/10.11501/8836977