E2855 – 第34回京都図書館大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.516 2026.01.15

 

 E2855

第34回京都図書館大会<報告>

向日市立図書館・塚本哲也(つかもとてつや)

 

  2025年11月10日、「図書館×地域連携の可能性」をテーマとして、第34回京都図書館大会(E2659ほか参照)が京都府立京都学・歴彩館において開催された。利用者の要望や地域社会の要請に応える図書館サービスのあり方を、ソフト・ハードの両面から探るべく、講演や事例発表が行われた。

●基調講演

  株式会社スターパイロッツ代表の三浦丈典氏から、「近未来のまちとそこにある図書館」と題して基調講演が行われた。自分のまちを愛する子どもをひとりでも多く増やすことが、将来の地域社会を豊かにするという信念のもと、地域住民の声を丁寧に聞きながら公共施設等の設計を進めてきた三浦氏は、図書館もまちへの愛着を育む役割を担い得る施設であると評価し、「図書館をつくるということは、まちをつくるということ」と提唱した。

  一例として、三浦氏自身が設計した牧之原市立図書交流館(静岡県)「いこっと」(CA2072参照)について取り上げた。この施設は市民の切実な願いから図書館サービスの充実が求められていた中、これまで商業施設として使用されていた建物を転用したもので、パリの書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」の軒先に多くの人々が集う街角の光景から着想を得て、インクルーシブで寛容な公共空間の創造を目指し、「公設民営」でも「民設公営」でもない、「民設共営」の実現を図ったと説明した。

  また、瑞穂町図書館(東京都)の大規模改修では、事前にワークショップを開き、普段図書館には行かない人たちとも意見交換を重ね、改修に反映させた結果、改修前と比べ大幅に利用者が増えたとの紹介があった。静かに本を読みたい利用者と、友だちとおしゃべりしながらくつろぎたい利用者が、どちらも快適に過ごせる施設になったことなどから、公共図書館のあり方が変わりつつあると三浦氏は指摘した。

  最後に、いずれの事例も、建築(改修)計画の立案から建築後(改修後)の館内サービスの充実や快適な空間の維持に至るまで、地域住民・事業者・図書館利用者等と図書館が一緒に取り組んできたことを三浦氏は強調。今後の公共図書館づくりは、行政だけで何とかしようとせず、「ぜひ地域住民ら周りをどんどん頼ろう」と提案した。

●事例発表1 図書館と観光まちづくり

  公益財団法人日本交通公社の福永香織氏から、地域活性化の複合政策として観光を捉え直す視点で、観光振興に貢献している図書館サービスとして、恩納村文化情報センター(沖縄県)、紫波町図書館(岩手県)、札幌市図書・情報館、鳥羽うみライブラリー(三重県)、京都市立図書館と同市内の民間事業者の事例紹介があった。観光と図書館は全体で見ればほとんど結びついていないのが実情ではないかと指摘しつつ、地域の歴史資料からヒントを得るなどしながら、地域活性化に図書館が貢献することへの期待が述べられた。

●事例発表2 学校図書館から見る持続可能な地域連携

  京都府立宮津天橋高等学校宮津学舎の大槻芙美代氏から、高校生による宮津市立図書館でのテーマ展示の事例発表があった。市立図書館からの提案で始まり、高校生たちも意欲的に参画し、利用者からも好評で6年間継続している事業だが、一方で市立図書館における中高生の利用は促進されていないなど課題もあると指摘された。高校生自身にとってより学びの多い取組に変えていくにはどうすべきかなど、持続可能性も見据え引き続き取り組んでいくと総括した。

●事例発表3 地域に開かれた大学をめざして

  京都府立医科大学附属図書館の大瀧徹也氏から、附属図書館が所在する広小路キャンパスを舞台に、地域での大学の存在価値を高め、大学全体を活性化させるというプロジェクトの一環として実践した、ハード・ソフト両面での図書館改革について事例発表が行われた。館内1階を改装し2025年4月にオープンしたラーニングコモンズ「Koto Square」(コトスクエア)は、多様な設備のひとつひとつに利用者の利便性に配慮した工夫を施し、フロア内での飲食を認めたこと等も相まって学生から好評との報告があった。

●パネルディスカッション

  京都図書館大会実行委員の山下ユミ氏(京都府立図書館)による進行のもと、ゲストスピーカー4人によるパネルディスカッションが実施された。4人の発表に共通することとして、デザインに対する意識や、子ども(学生)の頃からの図書館の利用体験を大切にしようとする意識が感じられた等の意見が交わされた。

  マルチメディアやAIの普及など、図書館を取り巻く環境が大きく変わる中、地域に根ざした図書館づくりに一生懸命取り組む多くの事例を改めて知ることができ、大変充実した大会であった。引き続き他館の様々な工夫を学びながら、ひとつでも多く自分たちの図書館運営にも還元していきたい。

Ref:
“第34回京都図書館大会【令和7年11月10日(月)開催】”. 京都府立図書館.
https://www.library.pref.kyoto.jp/council/libconf/34/
株式会社スターパイロッツ.
https://www.starpilots.jp/
公益財団法人日本交通公社.
https://www.jtb.or.jp/
“【宮津学舎】宮津市立図書館との連携”. 京都府立宮津天橋高等学校. 2024-07-19.
https://www.kyoto-be.ne.jp/miyazutenkyou-hs/mt/miyazu/2024/07/post-457.html
広小路キャンパス活性化プロジェクト.
https://hirokojipj.kpu-m.ac.jp/
上原賀奈子. 第32回京都図書館大会<報告>. カレントアウェアネス-E. 2024, (471), E2659.
https://current.ndl.go.jp/e2659
水野秀信. 民と官で築いた牧之原市立図書交流館「いこっと」. カレントアウェアネス. 2024, (362), CA2072, p. 2-4.
https://current.ndl.go.jp/ca2072