E2675 – 聖学院大学総合図書館のビブリオバトル:10年の取組と展望

カレントアウェアネス-E

No.475 2024.03.07

 

 E2675

聖学院大学総合図書館のビブリオバトル:10年の取組と展望

聖学院大学総合図書館・中山浩二(なかやまこうじ)

 

  2023年11月、聖学院大学総合図書館は、思いもかけず「Bibliobattle of the Year 2023」(E2572E2383CA1830参照)で優秀賞を受賞した。当館がビブリオバトルに取り組むようになって10年という節目の年に、こうした栄誉にあずかったことに驚きと深い感慨を覚えている。授賞にあたっては、当館のビブリオバトル普及活動が「大学内で組織連携をしながら、学内外の様々な人にインパクトを与える活動」であることが評価された。本稿では当館のビブリオバトルの取組と展望について紹介する。

●当館のビブリオバトルのはじまり

  2011年8月、当館職員が大学図書館問題研究会第42回全国大会でビブリオバトルに出会い、その可能性に魅せられたことが、すべての始まりであった。職員が授業の一コマを使って図書館オリエンテーションを実施するなど、以前から図書館との連携があった本学日本文化学科の教員に、ビブリオバトルを紹介した。これに教員も興味を示し、2013年度から一年次必修の基礎教養科目の授業内でのビブリオバトル開催が決まった。授業に先立ち、まずは職員が体験してみようと、2012年度に職員研修の一環として、少人数で車座になって行うコミュニティ型のビブリオバトルを開催したのが、本学における最初の取組である。

●教職学協働のビブリオバトル

  こうして、2013年度から読書推進および「読む・聞く・話す・書く」というアカデミックスキルの育成を目的に、授業でビブリオバトルの開催が始まった。始めに履修者全員を少人数のグループに分けてコミュニティ型のビブリオバトルを行い、その後、各グループでチャンプ本に選ばれた本を紹介した学生が発表を行うイベント型の決勝を行っている。その後、政治経済学科や欧米文化学科の基礎教養科目でも、日本文化学科と同じ形式でビブリオバトルが取り入れられるようになった。

  また、授業から派生して学生独自の動きも出始めた。2015年度には図書館で展示やイベントなどの読書推進活動を行う図書館サポーター「セラエノ」という学生団体も組織された。以降、当館では「セラエノ」と連携しながらビブリオバトルを開催していくこととなる。

●ビブリオバトルの埼玉県内への広がり

  学内でのビブリオバトルの活動が活発になっていくと、ビブリオバトル普及を進める非営利団体のビブリオバトル普及委員会に入会し、委員として学外でのビブリオバトルに参加する職員も現われた。2016年度には、同じ埼玉県内で普及委員会に所属している高校司書からの勧めもあり、高校生を対象とした「高校生ビブリオバトル・ワークショップ」を当館で開催した。本学の学生がファシリテーターとして参加し、高校生と一緒にアクティブラーニングによるワークショップ形式で行うビブリオバトルである。コロナ禍で休止した年を除き毎年実施しており、当館の特色の一つと言えるイベントに成長した。また、2017年度には、埼玉県教育委員会主催の「彩の国高校生ビブリオバトル」にて、参加者である高校生に向けて、本学におけるビブリオバトル開催事例の報告なども行った。

  そのほか、前述の高校司書との繋がりから、埼玉県図書館協会主催の図書館イベント「図書館と県民のつどい埼玉」において実施されている中高生のビブリオバトルの運営に、2018年度から毎年実行委員として当館職員が協力をしている。

●今後に向けて

  2023年、県内の大学ビブリオバトルを盛り上げるために、全国大学ビブリオバトル2023のブロック決戦を当館主催で開催した。これまでにない取組として、地元書店と連携してショッピングモールのイベントスペースで開催するなど工夫を凝らし、県内外のブロック予選を勝ち抜いた5人のバトラーが出場した。今後、埼玉県内の大学ビブリオバトルの普及推進にあたっては、県内45の大学・短期大学・専門機関が加盟する埼玉県大学・短期大学図書館協議会の繋がりを生かして、他大学図書館や各大学の学生協働団体等と連携を進めていければと考えている。

  2023年度は、これまでにない新たな出会いや挑戦の機会を得ることが出来た一年であった。地域の書店や公共図書館と連携を深めながら、ビブリオバトルを活用した読書推進活動を進めていくことも、今後の目標の一つである。これからも知の拠点として、当館のリソースを生かして、地域の教育文化発展に寄与できるよう尽力していきたい。

Ref:
“Bibliobattle of the Year 2023大賞候補と応援コメントのご紹介”. note. 2023-10-19.
https://note.com/com_bibliobattle/n/n89d545af79cc?magazine_key=m6cc3f87a4c95
知的書評合戦ビブリオバトル公式サイト.
https://www.bibliobattle.jp/home
“報告レポート:第7回 高校生ビブリオバトル・ワークショップ”. 聖学院大学. 2023-06-30.
https://www.seigakuin.jp/news/seig/20230624bbwreport/
図書館と県民のつどい埼玉2023.
https://www.sailib.net/tudoi2023/
江上昇, 関西館図書館協力課調査情報係. 「コバショでビブリオ」発起人インタビュー. カレントアウェアネス-E. 2023, (451), E2572.
https://current.ndl.go.jp/e2572
永石剛. 番組を生んだ言葉の力:長崎県をビブリオバトルの強豪県に. カレントアウェアネス-E. 2021, (413), E2383.
https://current.ndl.go.jp/e2383
吉野英知. 新しい本の楽しみ方「ビブリオバトル」の多方面への展開動向. カレントアウェアネス. 2014, (321), CA1830, p. 14-17.
https://doi.org/10.11501/8752503