E2481 – コロナ禍でのレファレンスサービス体制再構築:Teamsの活用

カレントアウェアネス-E

No.432 2022.03.24

 

 E2481

コロナ禍でのレファレンスサービス体制再構築:Teamsの活用

立正大学図書館・吉水拓哉(よしみずたくや)

 

  立正大学図書館(東京都・埼玉県)では,クラウド型サービスMicrosoft365のアプリケーションMicrosoft Teams(以下「Teams」)を活用してレファレンスサービス体制を見直した。コロナ禍において,既存のシステムを活用して時間や費用をかけずに実施した取り組みとして評価され,2021年11月8日に第7回図書館レファレンス大賞文部科学大臣賞を受賞した。本稿では,その内容を紹介する。なお,レファレンス大賞に応募した際の動画を一部編集し本学図書館ウェブサイトにて公開している。取り組みの詳細を説明しているほか,後述する調査票のフォーマットについて具体的な画面を示しているので興味を持った人はご参照願いたい。

●体制見直しの経緯

  2020年度は新型コロナウイルス感染症感染拡大防止対策として,事前予約制による開館や,対面によるレファレンスサービスの停止といったサービス制限を行った。その代替策として,非来館型サービスを拡充するために,本学で使用している図書館システム「ネオシリウス」に備わっていたオンラインレファレンス機能を活用して,利用者への対応をオンラインで行えるようにした。

  利用者からの調査依頼受付や回答をオンラインで行うようになった一方で,学園の方針により出勤人数制限や在宅勤務の導入が始まり,職員の勤務体制や業務内容が一変した。レファレンス業務の調査作業においては,在宅勤務時に調査した内容を出勤時に手書きで引継ぐといった手間が生じることになった。調査量はコロナ禍前に比べると減少したが,調査内容は複数の担当者の目で確認が必要なものが多く,利用者への回答に日数を要することが増えた。レファレンス担当者は他の業務を兼任しているため,従来の調査体制では担当者の負担が大きく,利用者サービスに影響が及ぶ懸念があったことから,体制の見直しを始めた。着目したのは,コミュニケーションツールのTeamsであった。

  Teamsを選んだ理由は2点ある。1点目は,学内ICTサービスの一部として使用されていたことである。そのため新規契約や他部署との折衝が発生することなく使用し始めることができた。また,学生も使用しているため,学生へのサービス展開や図書館の学生アルバイトを絡めた利用を想定することができた。もう1点は世間的な認知度である。図書や動画などで操作方法が紹介されていたため,苦労することなくサービス体制を構築することができた。

●新レファレンス体制の構築と成果

  調査の進捗状況や資料をオンライン上で共有できる体制を構築するにあたり,留意した点を環境面と運用面に分けて紹介する。

  環境面では,これまで使用していた手書きフォーマットをオンライン上で編集しやすい形式に変更し,調査した内容を詳細に入力できるようにした。例えば,日々の統計や引継事項を記載する連絡票は,文字の入力より集計や前日の内容を把握することを重視しExcelを用いて作成した。日付ごとにsheetを分けたことで,手書きのフォーマットからレイアウトを大幅に変更することなく,かつ先の予定にも事前に注意事項等を記載できるようになった。事項調査等で用いる調査票は,調査内容を詳細に記録する必要があることからWordを用いて作成した。手書きから入力方式になったことで,調査内容の記載やURL等の情報共有が容易になった。また,調査票がデータで残るため,回答書の作成時も情報を整理しつつ円滑に作成できるようになった。

  運用面では,在宅者と出勤者が連携して業務にあたることから情報共有に重点を置いた。Teamsにはチームとチャネルのコミュニケーション単位があり,レファレンス業務の担当者でチームを構築し,引継,調査,諸連絡といった各項目のチャネルを作成した。特に調査のチャネルでは,各調査内容のデータを依頼があった年度や期間で分けて収納するフォルダも作成している。その結果,過去の類似した調査依頼の内容を容易に参照できるようになった。これまでは,調査で使用した資料を紙で保管していたため,探す時間がかかることに加え保存場所も悩みの一つであった。

  構築後の大きな成果は,キャンパスの垣根を越えて調査ができるようになったことである。これまでは各キャンパスの担当者内で調査を進めていたが,両キャンパスの資料や人員を用いて調査できるようになった。その上,情報共有が容易になったことで両キャンパス担当者のレファレンス能力向上にも繋がっていると考えている。また,利用者サービスの点では,Teamsにテレビ会議機能も備わっているため,相談内容によっては画面共有をしてデータベースの操作案内や資料の説明ができる。図書館システムのオンラインレファレンス機能がカウンター窓口の代替となり,Teamsがレファレンス担当職員と利用者を画面越しに繋ぐことができるようになった。つまり非来館型のサービスを展開しつつ,対面形式に近づくことができたのである。

●展望

  Teamsの活用は,コロナ禍でも円滑にレファレンスサービスを利用者に提供したい,という想いから始まった。その結果,担当者の勤務体制や社会動向に左右されることなく,利用者からの要望に応え続けている。今後は対面でのサービス再開を視野に入れつつも,更にTeamsを活用し,利用者と担当者双方にとってよりよいレファレンスサービス体制を目指していきたい。

Ref:
“第7回図書館レファレンス大賞最終審査・授賞発表”. 図書館総合展.
https://www.libraryfair.jp/forum/2021/137
“レファレンスサービス”. 立正大学図書館.
https://www.ris.ac.jp/library/learn/reference.html
“コロナ禍における非来館型サービスの拡充とTeamsを活用した調査体制の構築”. YouTube. 2022-03-07.
https://www.youtube.com/watch?v=NcllWflaGS0