E2235 – 2019アーバンデータチャレンジ京都 in NDL関西館<報告>

カレントアウェアネス-E

No.386 2020.02.27

 

 E2235

2019アーバンデータチャレンジ京都 in NDL関西館<報告>

アーバンデータチャレンジ2019京都府ブロック・青木和人(あおきかずと)

 

●はじめに

 地域課題解決のために市民自身がITテクノロジーを活用して,行政サービスの問題や社会課題を解決する取り組みであるシビックテック(Civic Tech)が日本においても盛んになりつつある。このシビックテックの1つとして,一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が,オープンデータを用いた地域課題解決コンテストである「2019アーバンデータチャレンジ」(UDC;E1709E1877参照)を開催した。そのUDCの地域拠点の1つであるUDC京都府ブロックと,国立国会図書館(NDL)との共催で,地方公共団体等が保有するオープンデータやNDLなどが公開する日本国内の美術館・図書館・公文書館・博物館分野のGLAMデータを用いた「2019アーバンデータチャレンジ京都 in NDL関西館」が,同関西館(京都府精華町)で開催された。このイベントでは,2019年11月9日にアイデアソン,同年12月7日にハッカソンが行われた。

 アイデアソンとはアイデアとマラソンを組み合わせた造語で,多様な参加者が集まって新しいアイデアを生み出すために行われるイベントである。ハッカソンは参加者がマラソンのように数時間プログラミングに没頭し,ハックしてアプリケーションやツールを作るイベントである。アイデアソン,ハッカソンは関西館では初の試みであった。

●アイデアソン

 アイデアソンでは,企業の開発者,行政のオープンデータの担当者や図書館員,大学教員や大学生など約20人が集まった。午前中はレファレンス協同データベース(以下「レファ協」),国立国会図書館デジタルコレクション,ジャパンサーチ(試験版;E2176参照)の説明と,NDL東京本館で2019年9月14日・15日に行われた「GLAMデータを使い尽くそうハッカソン」で作成された作品紹介があった。続いて,後援の京都府,京都市,精華町の各地方公共団体のオープンデータの紹介があった。

 その後,3つのチームに分かれてチームビルディングを行い,各自が地域課題解決のためのサービスのアイデアを出し合った。関西館内案内の後,昼食にて大いにコミュニケーションを図った。

 引き続き午後は,各アイデアをチームとしてブラッシュアップした。災害に強く安心して住める場所を選びたい,ウィキペディアタウン(CA1847参照)での情報発信で地域振興を図りたい,子どもに京野菜の良さを伝えたいなどの地域課題解決のアイデアが3つにまとまり,最後にプレゼンテーションにて披露された。

●ハッカソン

 ハッカソンでは,アイデアソンのチーム関係者と新たな参加者も加わって,アイデアソンで披露された3つのサービスのアプリケーションやツールが終日,試作された。その結果,京都府や京都市,精華町が公開するオープンデータに加え,NDLが提供するレファ協に登録されたデータ,国立国会図書館デジタルコレクションに登録された古書等の画像データ,さらにはジャパンサーチが提供するGLAMデータを利用して,以下の3作品が作成された。

  • My Place
     新居探しで災害にも強く安心して住める場所を選びたいという地域課題解決のために作られた,過去の災害や治安に関するデータ等を活用して自分の価値観にあった居住地を確認できるウェブアプリ
  • れはっちが手伝う ウィキペディア編集支援ツール
     全国に浸透しつつあるウィキペディアタウン開催に必要な未編集のトピックの発見,関連文献の調査,コースの設定などの準備のため,レファ協に登録されたレファレンス事例データを活用し,レファ協のイメージキャラクター「れはっち」に質問する形式でWikipedia編集やウィキペディアタウンの活動に有用な情報を探すアプリ
  • “KyoYasai” 京育カードバトル
     子どもに京野菜の良さを伝えたいという地域課題解決のために作られた,子どもに楽しく京野菜を学んでもらう地域教育素材としてのデジタルカードゲームアプリ

●おわりに

 今回の取り組みでは,ハッカソンというイベント名称やエンジニア向けの告知サイトで広報したこともあり,NDLに初めて来たという企業や学生エンジニアの多数の参加を得ることができた。これらの人材が今までその存在を知らなかったNDL等のGLAMデータと地方公共団体のオープンデータを組み合わせて,地域課題解決のためのサービスのアプリケーションを作成することができたことに今回のイベントの意義がある。

 講師を務めたUDC2019実行委員の柴田重臣氏からも,1日のハッカソンで3チームすべてが成果を出せたことは素晴らしい,是非,このままUDC2019コンテストの作品応募へつなげてもらいたいとの期待が寄せられた。

 各チームはハッカソン後にも活動を継続して,コンテストに作品を応募し,2020年2月現在,審査中である。また,今回,コンテストにはNDLのデータを用いた作品を対象とする特別賞も設けられた。2020年3月14日に東京大学で行われる最終審査会での評価が期待されるところである。

Ref:
https://lab.ndl.go.jp/cms/UDC2019
https://connpass.com/event/152526/
https://connpass.com/event/152528/
https://lab.ndl.go.jp/cms/hack2019
https://lab.ndl.go.jp/dataset/UDC2019/ideathon1_MyPlace.pdf
https://lab.ndl.go.jp/dataset/UDC2019/ideathon2_rehacchi.pdf
https://lab.ndl.go.jp/dataset/UDC2019/ideathon3_KyoYasai.pdf
https://urbandata-challenge.jp/2019submitstart
https://urbandata-challenge.jp/news/2019ndl
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