E2197 – 独・Library of the Year受賞のベルリン中央州立図書館

カレントアウェアネス-E

No.380 2019.11.21

 

 E2197

独・Library of the Year受賞のベルリン中央州立図書館

利用者サービス部図書館資料整備課・大久保玲(おおくぼれい)

 

 2019年10月24日,ドイツにおける「図書館の日」に,ドイツ図書館協会とドイツテレコム財団が決定する“Bibliothek des Jahres(Library of the Year)”の授賞式が行われた。ドイツの“Library of the Year”は,分野や規模を問わず,ドイツの特に優れた図書館に毎年贈られる賞で,ドイツにおいて図書館に贈られる国家的な賞としては,唯一のものである。そして,その受賞館として,2019年度はベルリン中央州立図書館(Zentral- und Landesbibliothek Berlin:ZLB)が審査委員会の満場一致で選出された。ここでは,特に高く評価され,選出の理由となった参加型サービスとデジタルサービスを中心に,ZLBの概要を紹介したい。

 ZLBは,アメリカ記念図書館とベルリン市立図書館が,1995年に合併して誕生し,現在は財団法人によって運営されているが,いまも各館は元の名前で呼ばれている。アメリカ記念図書館は,1954年,ソヴィエト連邦によるベルリン封鎖を耐え抜いた記念として,米国民からベルリン住民に贈られた公立図書館に起源を持ち,移民やアーティストの多いクロイツベルク区に位置する。ここには,人文科学や芸術に関する資料が集められ,児童サービスもこの館において行われる。他方,100年を超える歴史を持つベルリン市立図書館は,首都機能が集積するミッテ区に位置する。ここには,自然・社会科学分野の資料に加え,ベルリンに関する膨大な地域資料が集められる。開館時間は両館共に,平日の10時から21時,及び土曜の10時から19時であり,更にアメリカ記念図書館は2017年9月以降,日曜の11時から17時にも開館する。両館への来館者数の合計は,年間およそ150万人にものぼる。

●参加型サービス

 ZLBにおける参加型サービスは,社会問題に関するイベントを実施し,市民意識の育成を目指す“Community-Projekte(Community Project)”や,市民の余暇活動を充実させるような日曜日のイベント等,多岐にわたる。

 “Community Project”は,館内のオープンなデザインスペースにおいて多様なイベントを実施し,市民相互の意見交換を促すプロジェクトである。当スペースには児童とアーティストの共同作業によって,ベルリン都市社会の諸相についての展示がなされることもあれば,ジャーナリズムの諸問題について,報道の現場で働くジャーナリストと市民が話し合うための交流会が開催されることもある。それぞれ,開催の背景には,移民の流入により引き起こされたベルリン都市社会の変化や,「フェイク・ニュース」の跋扈を受けたジャーナリズムへの関心の高まりがある。

 他方で,「楽しむこと」に主眼を置いたイベントは,アメリカ記念図書館において,日曜日に開催される。同館は,日曜日には自動貸出返却機による資料提供を行う一方(レファレンスカウンター等は休業),参加型サービスの一環として,ラフターヨガ講習会や子どものための人形劇等,多彩なイベントを開催している。これらの取り組みは,図書館を「地域社会のための広場」とすることを狙いとしており,「市民意識の育成」を主目的としていた“Community Project”に比べ,イベント内容の自由度が高いことが特徴である。

●デジタルサービス

 ZLBは“Digitale Welten(Digital Worlds)”というプロジェクトのもと,大規模な資料のデジタル化を進めた。その成果として,専用のアプリを取得すれば,館内で日刊紙・雑誌類を含む各種デジタル資料を,タブレットやスマートフォンで閲覧することができるようになった。また,ベルリンの地域史に関するデジタル化されたリソースは,専用ウェブサイト上で公開されている。その他にも,映画については“filmfriend”というストリーミングサービスにより,古典映画,ドキュメンタリー映画,児童向け映画等がオンデマンド方式で配信されており,ドイツ国内及びスイスの参加館の利用者は,IDとパスワードによりログインすれば,館内外を問わず,これらの映画を視聴することが可能となっている。更に,ZLBは,デジタル資料の提供だけでなく,IT技術そのものの普及にも力を入れており,市民は館内でプログラミングや仮想現実(VR)等の技術について学ぶこともできる。

 以上のような取り組みによって,ZLBは,都市コミュニティのハブとなる図書館像の確立に成功した。同館が提供する多様なサービスは,それぞれが現代社会の問題解決に向けた明確な目的を持ち,資料提供のみにとどまらないことが印象的である。市民のニーズを探求し,求められる図書館像を考え抜いた上で提供されるこれらのサービスは,まさに次世代の図書館にふさわしいといえよう。

Ref:
https://www.zlb.de/
https://www.zlb.de/ueber-uns/presse/pressemitteilung-detail/news/forum-fuer-die-stadtgesellschaft-die-zentral-und-landesbibliothek-berlin-ist-bibliothek-des-jahre.html
https://www.bibliotheksverband.de/dbv/presse/presse-details/archive/2019/may/article/forum-fuer-die-stadtgesellschaft-die-zentral-und-landesbibliothek-berlin-ist-bibliothek-des-j.html
https://www.telekom-stiftung.de/presse/forum-fuer-die-stadtgesellschaft-die-zentral-und-landesbibliothek-berlin-ist-bibliothek-des
https://www.bibliotheksverband.de/dbv/auszeichnungen/bibliothek-des-jahres.html
https://www.berlin.de/sehenswuerdigkeiten/3561110-3558930-amerika-gedenk-bibliothek.html
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06082211.htm
https://windgategermany.jp/distinations/エリア紹介/
https://digital.zlb.de/viewer/
https://www.intranda.com/portfolio-item/zlb/