E1919 – 京都府立図書館における図書館協議会の設置とそのねらい

カレントアウェアネス-E

No.326 2017.06.08

 

 E1919

京都府立図書館における図書館協議会の設置とそのねらい

 

    京都府立図書館は,2017年4月1日に施行した京都府立図書館条例(京都府立図書館設置条例(昭和25年京都府条例第62号)を全部改正)によって,図書館協議会を設置した。周知のように,図書館法第14条2項で「図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに,図書館の行う図書館奉仕につき,館長に対して意見を述べる」と定められている機関である。本稿では京都府立図書館協議会の設置とそのねらいについて述べる。

    当館では,2016年3月に「京都府立図書館サービス計画(平成28年度~平成32年度)」という中期計画を策定した。ここでは,「府内全域の図書館をつなぎ,支援するとともに,協力して図書館サービスを展開します」「多様な文化資源の情報を取り扱い,歴史と立地を活かしながら,幅広い調査研究のニーズに応えます」「議論し発信する場を提供し,課題を解決する拠点となることにより,文化の創造と地域の活性化に寄与します」という3つの基本方針のもとに,20の項目,64の具体策を定め,この間,「京都府図書館総合目録ネットワークシステムの充実を図る産官学連携プロジェクト」(E1907参照)を実施するなど斬新なサービスを開発・提供してきた。さらに,このサービス計画には「図書館協議会を新たに設置し,当館による内部評価と外部有識者による外部評価を両輪として計画の進捗状況について毎年度点検を行います。これにより,当館の運営の改善を図り,府内の図書館サービスの向上に努めてまいります」とも書き込んだ。

    図書館協議会は,現在ほとんどの都道府県・政令指定都市の図書館に設置され,それぞれで,主に日常の運営について活発な議論が行われている。また必要に応じて踏み込んだ提言を提出したり,運営形態自体についての意見を述べたりする場合もある。

    当館の場合,上記で述べたような「有識者による外部評価」を設置の原動力としている点が要点となる。これは,図書館法の「諮問に応ずる」「意見を述べる」という規定の延長線上に設定したものであるが,当初から「外部評価」というミッションを明示して組み込んだことが,当館の協議会の大きな特徴といえる。また,図書館協議会が設置されたことで,当館としても協議会開催の準備を通じて,日々の業務を自ら再点検するという好循環が生まれることが期待される。

    では,その評価の要点とは何か。当館の場合,評価手法の組み立てから協議会で議論いただくべく準備を進めているので,ここで正面からは論及しないが,図書館を取り巻く状況を整理することで,これからの図書館評価に必要な点を考えてみたい。

    まず,確認したいのは,戦後復興期から高度経済成長期に確立し,現在もいまだ図書館評価と言えば最初に出てくる貸出数と来館者数以外の多様な数値をもとに図書館は評価されなければならないということである。人口が増えず,情報環境が多様になったなかで,この2つの数字が大きく伸びることは想定できない。

    その上で,数値になりにくい「業務改善(経営品質の向上)」や新しい取組をどのように評価するかが論じられても良い。都道府県立図書館は新しい動向をキャッチアップして,その都道府県全体の図書館サービスの質の向上に努めるべきであり,それに加え,当館はサービス計画において「常に斬新なサービスに挑戦」する旨を記載している。このような社会の動向に合わせた業務・サービスの改善は意義のあることだが,当然それなりの労力がかかる。しかし,従来の図書館評価の手法ではその労力と成果を評価の対象とすることが難しい。組織としての運営目標(当館の場合はサービス計画)と達成度,さらにそれにかけた労力との兼ね合いを,もっと緊密に関連付けた評価の手法が求められるべきと考える(CA1878参照)。

    既に超高齢社会となっている日本は,今後,人口がさらに減少すること,さらに地域格差の拡大も懸念されている。この状況を前提として,公立図書館も含めた公共セクターのサービスの再検討が必要とされている。「図書館を利用する」「図書館が利用される」とは何か,が根本的に問われている。

    図書館協議会での議論を通じ,当館として,この問いに何らかの解答を見出せるよう努力したい。

京都府立図書館・福島幸宏

Ref:
https://www.library.pref.kyoto.jp/?p=5779
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO118.html
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp
http://current.ndl.go.jp/FY2014_research
E1907
CA1878

 

 

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