E1867 – ロシアで国立電子図書館が開設

カレントアウェアネス-E

No.316 2016.12.08

 

 E1867

ロシアで国立電子図書館が開設

 

   ロシア連邦では,2016年7月3日連邦法第342号「連邦国家情報システム『国立電子図書館』の設立に関する連邦法『図書館事業について』の改正について」が成立した。これにより連邦法「図書館事業について」を改正し,国立電子図書館によるサービスが法的に位置づけられることになった。

   同法によると,国立電子図書館とは,国立電子図書館の利用者がアクセスできる電子媒体の資料の総体となるシステムと定義されている。設立の目的は,国民の歴史・科学・文化資産を保存すること,ロシア連邦の知的潜在力を向上させ,科学と文化を普及させるための環境を確保すること,ロシア連邦における単一の電子知識空間設立のための基礎を形作ることである。運営体制については,モスクワのロシア国立図書館(Russian State Library)がその中心的な役割を果たすことが定められており,参加館は,国立図書館,公共図書館,大学図書館,学校図書館,専門図書館,さらに博物館,文書館等の図書館以外を含むその他の機関である。運営資金は,連邦予算とその他の財源から拠出される。

   同法の成立に先行して,計画自体は2004年にモスクワのロシア国立図書館とサンクトペテルブルグのロシア国立図書館(National Library of Russia)が主導して始まっていた。2014年にはロシア文化省からモスクワのロシア国立図書館が運営の中心的な役割を果たすことを求められ,計画の遂行に責任を持つことになった。2015年1月13日には,モスクワのロシア国立図書館において,メドヴェージェフ首相に対する国立電子図書館のプレゼンテーションが実施された。その時点で,ロシア国立公共科学技術図書館やロシア国立児童図書館等33館が国立電子図書館にデータを提供しており,全文閲覧可能なデータは約167万点,書誌のみのデータは約2,600万点であると報告された。

   アクセスできる資料には,次の3種類がある。(1)パブリックドメインの著作物,(2)10年以上再版されていない学術的な著作物,(3)著作権者から許諾を得た著作物,である。

   国立電子図書館の資料は,多数ある国立電子図書館参加館内の端末から閲覧できるほか,個人でもインターネットを通じてアクセスでき,いずれの方法でも無料で閲覧できる。参加館内の端末ではすべての資料を閲覧できるが,個人によるインターネット経由での利用では,著作権の制限がある資料は閲覧できない。

   インターネットから国立電子図書館を利用する手順は次のとおりである。トップページを開き,まず「図書館」か「博物館」か「文書館」をタブで選択する。次に「目録」(書誌のみのデータ)と「出版物」(全文閲覧可能なデータ)のどちらを検索するかをラジオボタンで選択する。キーワード・著者・タイトルの検索窓があり,各項目の検索窓に入力して検索すると,ヒットした書誌の一覧が表示される。書誌一覧のうち,鍵がかかっているアイコンが表示された資料は,著作権の制限のため閲覧できないものであり,鍵がかかっていないアイコンが表示された資料は,閲覧できるものである。詳細検索画面も用意されており,出版年や,楽譜・地図・逐次刊行物などのコレクション名,出版者などの項目で検索できるほか,一部の検索項目間は演算子(and/or/not)を使用することができる。

関西館アジア情報課・酒井剛

Ref:
http://нэб.рф
http://publication.pravo.gov.ru/Document/View/0001201607040121
http://base.garant.ru/103585/
http://www.rsl.ru/ru/s410/nel/
http://www.rsl.ru/ru/news/140115
服部玲. 海外出版レポート ロシア : 「ナショナル電子図書館法」の成立 . 出版ニュース. 2016, (2420), p. 22-23.