カレントアウェアネス-E
No.306 2016.06.30
E1813
鹿角市立図書館のオリジナルLINEスタンプ発売について
◯はじめに
秋田県鹿角(かづの)市は県内最北に位置する人口約3万3,000人の小さな市である。市内には花輪図書館と立山文庫継承十和田図書館の2館があり,そのうち,花輪図書館が,複合施設「鹿角市文化の杜交流館コモッセ」内に移転し,2015年4月16日,リニューアルオープンした。同時に両館の運営主体が鹿角市から指定管理者の株式会社リブネットへ移行したことで,民間事業者による独自サービスや話題性のある様々な企画の提供を行ってきた。
鹿角市立図書館(以下当館)が2016年4月に発売開始したLINEスタンプ「はなわんこ&トワダック」は,図書館により一層親しんでもらいたい,鹿角市のことを市内外の方々に知ってもらいたいという願いをこめて発案したものである。本稿では,当館におけるLINEスタンプの作成・発売について紹介する。
◯サービス内容について
LINEは,無料通話やメッセージの送受信が出来るコミュニケーションアプリである。「トーク」と呼ばれるテキストチャットの利用が多く,チャット上で使用できるイラストのLINEスタンプは,誰でも制作・販売ができ,人気を集めている。
当館では花輪図書館のリニューアルオープン1周年を迎えるにあたり,市内外の方々に鹿角市のことを愛してもらえるよう,図書館のオリジナルキャラクターを発案しLINEスタンプとして発売することとした。これは指定管理者として,図書館の魅力のアピールに留まらず,「公立」の図書館として待ちの姿勢に終始することなく,「主体的に動き独自サービスで市民へ還元する」という施設づくりを目指したためである。売上金は,一旦,指定管理料上の収入とし,全額図書購入費に充て市民へ還元することにした。
◯LINEスタンプ発売までの経緯
リニューアルオープンにより花輪図書館は,多くの市民の注目を集めたが,社員やスタッフから,若年層を対象としてさらに図書館をアピールしていくため,図書館のオリジナルグッズを販売したいという声があがっていた。切手,布バッグ,風呂敷など様々な案が挙げられたが,その中から若年層の利用が多く,日常のコミュニケーションの中で使用できるLINEスタンプを採用することになった。
両館から選出されたスタッフ数名による「LINEスタンプ実行委員会」を発足させ,ターゲットとする年代や購買層を絞り,コンセプトやイラストパターンなどの話し合いを重ねた。
一番時間を費やしたのはキャラクターデザインである。「鹿角らしさ」「図書館らしさ」を出しつつも,LINEスタンプとして使いやすく,かつ市民に親しみやすいようなキャラクターにしたいと考えた。鹿角市の伝説や市の鳥をイメージしたもの,本をモチーフにしたキャラクターなど,たくさんの案の中から「はなわんこ」と「トワダック」が決定された。両館の館名から着想を得て,花輪図書館は犬をモチーフとし,立山文庫継承十和田図書館はアヒルをモチーフとした。
デザインは絵の得意なスタッフが担当してデータを作成していった。日常の中で使いやすいスタンプを意識しつつ,「おはようございます」「こんにちは」など汎用性の高いものを中心に,「図書館に行こう」「勉強中」といった図書館に関係したスタンプと「めんこい(かわいい)」「ぬぐい(暑い)」など鹿角弁を交えたスタンプを作成した。
◯発売後の状況と今後の展望
はなわんことトワダックは,二人組で図書館だよりやイベントの告知など,主に広報の場に積極的に登場させている。子どもの日には児童向けのシールや塗り絵の配布も行ったが好評だった。LINEスタンプの売上は発売初月が約80個と,滑り出しは好調であった。しかし,スタンプの認知度は十分ではなく,私たちの挑戦はまだ始まったばかりである。幸いこのような取組みは市民から好意的に受け取られており,市民に身近なキャラクターとして育てていきたいと考えている。
最後にこのような前例のない取組みを承認し応援してくださった鹿角市教育委員会生涯学習課の皆さま,そして鹿角市立図書館を利用してくださっている市民の皆さまに感謝申し上げたい。
鹿角市立図書館(指定管理者:株式会社リブネット)・川上翔
Ref:
http://www.kazuno-library.jp/archives/684
https://store.line.me/stickershop/product/1258878/