カレントアウェアネス-E
No.302 2016.04.28
E1794
レンガ棟の新しいサービス~国際子ども図書館リニューアル~
国立国会図書館国際子ども図書館では,2015年6月末の新館「アーチ棟」竣工後(E1731参照),帝国図書館(1906年建設)時代からの建物である「レンガ棟」の改修を行っている。改修は,アーチ棟に移転した資料室・事務室跡地等の建物内部と,屋根・外壁等の建物外部(2016年6月末頃に終了予定)において行うものである。このうち,建物内部の改修は,それぞれの改修箇所のサービス休止を伴ったが,改修とこれに付随する諸準備(資料移転など)が終了したところから,順次サービスを開始している。2016年2月には,レンガ棟2階に「調べものの部屋」と「児童書ギャラリー」を開室した。また2016年3月にはレンガ棟1階の「子どものへや」と「世界を知るへや」を再開し,3月下旬には同棟3階の「本のミュージアム」と「ホール」で展示を再開した。3月末時点では,建物内部の改修はほぼ終了している。
以上の部屋を含む,改修後のレンガ棟各室のサービス概要,特色等は,次のとおりである。
◯調べものの部屋(レンガ棟2階)
主に中高生の調べものに役立つ資料約1万冊を開架している。この部屋では,2016年4月から,修学旅行や校外学習の中高生のグループを対象とした,予約制の「調べもの体験プログラム」を開始している。調べものの部屋の資料や端末を利用しながら,短時間で「図書館における調べもの」を体験することができる。
◯児童書ギャラリー(レンガ棟2階)
帝国図書館時代(旧・特別閲覧室)の優美な室内の雰囲気を生かし,明治から現代までの日本の児童文学史・絵本史をたどる常設の展示室としてオープンした。展示している約1,000冊の資料は手に取って読むことができる。このほか,室内の端末で提供する「国立国会図書館デジタルコレクション」や「絵本ギャラリー」で閲覧する作品もある。
◯子どものへや,世界を知るへや(レンガ棟1階)
子どものへやは,子どもと本のふれあいの場として,小学生以下を主たる対象とした絵本や児童書約9,000冊を開架している。この部屋では,親子でくつろいで読書を楽しめるよう,マット上で靴を脱いで本を読むことができるスペースを新設した。
世界を知るへやは,世界の国・地域を知るための国内外の児童書約1,800冊を開架し,改修前よりも外国の児童書を充実させた。
◯本のミュージアム,ホール(レンガ棟3階)
本のミュージアムでは,2016年7月24日まで国際子ども図書館のリニューアルを記念する展示会「現実へのまなざし,夢へのつばさ:現代翻訳児童文学の半世紀」を開催している。今後,国際子ども図書館が所蔵する豊富な蔵書を魅力的に紹介する展示会を,順次開催する予定である。
ホールは,音楽会などのイベント会場として用いられるほか,帝国図書館時代からの歴史や建物の紹介を行う展示コーナーもある。
◯休憩・飲食・授乳スペース(レンガ棟1階)
2015年11月に休憩・飲食・授乳スペースを新設した。休憩・飲食可能なスペースに加えて,救護室,授乳室,調乳室,おむつ替えコーナーなどを備えている。
レンガ棟において新たなサービスが始まり,アーチ棟におけるサービスとあわせて,国際子ども図書館の施設増築・改修に伴う新たな来館サービスの体制が整った。2015年9月17日に開室した児童書研究資料室と,地下書庫,研修室を擁するアーチ棟が主として,児童書や関連資料の収集・保存・提供をはじめとする「児童書専門図書館」としての役割を担う一方で,レンガ棟は主として,子どもに図書館や読書に親しむきっかけを提供する「子どもと本のふれあいの場」や,児童書の魅力を広く紹介する「子どもの本のミュージアム」としての役割を担う施設となった。こうした施設を基盤として,国際子ども図書館は「子どもの本は世界をつなぎ,未来を拓く!」という理念の実現に向け,サービスの向上を図っていきたい。
国際子ども図書館
Ref:
http://www.kodomo.go.jp/about/building/history.html
http://www.kodomo.go.jp/about/future/renewal2016/index.html
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9454042_po_geppo150809.pdf?contentNo=1
http://www.kodomo.go.jp/use/room/index.html
E1731