カレントアウェアネス-E
No.292 2015.11.12
E1731
児童書研究資料室の開室~国際子ども図書館リニューアル~
2015年9月17日,国立国会図書館(NDL)国際子ども図書館の新館(アーチ棟)に児童書研究資料室が開室した。アーチ棟は同年6月末に完成した,名前の通りゆるやかな弧を描いた建物で,65万冊収蔵可能な地下書庫と,講演会やイベントに使用する2つの研修室も擁している。本資料室は2階にあり,建物のカーブに沿って書架や机が配置され,ガラスのカーテンウォール沿いに長く伸びた閲覧席がある,広く開放的な部屋となっている。なお,児童書研究資料室は,国際子ども図書館が果たす3つの基本的な役割(1)児童書専門図書館,(2)子どもと本のふれあいの場,(3)子どもの本のミュージアム,のうち主に(1)の役割を担うもので,児童書に関する調査研究を行うための閲覧室である。
◯第一資料室・第二資料室を統合して児童書研究資料室へ
従来,既存棟(レンガ棟)の建物上の制約から資料室は第一・第二の2つに分かれていたが,これを統合し1つの資料室としたことで,国と地域により2室に分かれていた児童書や参考図書を,同じ部屋で提供することが可能になった。サービス上でも,複写センターの位置の関係などから,資料室間の移動が必要な場合があり利用者に不便をかけていた部分が改善された。
第一・第二資料室を合わせた面積は460平方メートルであったのに対し,児童書研究資料室は650平方メートルとより広くなり,閲覧席数は,これまでより3割程度増加し,54席となった。そのうち19席に資料の検索・請求・複写申込書の作成や「国立国会図書館デジタルコレクション」の資料の閲覧ができる利用者用端末を設置し,DVD・VHSなどの映像資料の視聴席,CD-ROMなど電子資料やマイクロ資料の閲覧席なども設けている。
資料室内には,国内外の児童書に関する参考図書・研究書や,当年にNDLで受け入れた国内の児童書,約140の国と地域の絵本,最新版の国内の小・中・高等学校の教科書など,約4万冊を開架している。また,今回新たに読書活動推進支援コーナーを設け,子どもの読書活動の推進に関する国内外の資料と情報を提供している。蔵書を紹介するための小展示のコーナーも設けており,本稿の公開時点では「国際アンデルセン賞を受賞した日本の作家と画家」をテーマとした展示などを開催中で,今後定期的に展示替えを行う予定である。
児童書研究資料室では,児童書を国内外合わせて約40万冊所蔵している。大部分が書庫にあり,利用者用端末から請求して閲覧することができる。また,1968年以前に国内で刊行された児童向けの図書約3万冊,1970年以前刊行の児童向けの雑誌約550タイトルなどはデジタル化されており,それらを含む「国立国会図書館デジタルコレクション」のコンテンツ約250万点すべてを利用者用端末上で閲覧することができる。
◯児童書研究資料室の新しいサービス
開室に伴い,従来から要望の多かった日曜日の開室を開始した(注)。これにより年間の開室日は,50日程度増加する。また,少人数のグループでの調査研究に利用できる予約制のグループ研究室を新たに設けた。さらに,視覚障害者へのサービスとして,グループ研究室を対面朗読場所としても提供するほか,NDL関西館所蔵の学術文献録音資料のうち児童書に関する資料の,国際子ども図書館への取寄せを開始した。2016年度には,DAISYデータの再生が可能な端末も導入する予定である。
◯今後の子ども図書館リニューアル
現在,既存の建物(レンガ棟)では改修工事を行っており,来年2月には,中高生の調べものに役立つ資料を集めた「調べものの部屋」,明治から現代までの日本の子どもの本の歴史をたどることができ,本を手に取って読むことができる展示室「児童書ギャラリー」が新しくオープンする。その他,子どものへや,世界を知るへやも一時休室して改修を行い,来年3月には全館リニューアルオープンとなる予定である。
国際子ども図書館資料情報課・山田牧
注;システムメンテナンスなどのため臨時休室することがある。
Ref:
http://www.kodomo.go.jp/news/2015-08.html
http://www.kodomo.go.jp/about/future/renewal2016/index.html
http://www.kodomo.go.jp/about/future/renewal2016/pdf/renewal2015-2016.pdf
http://www.kodomo.go.jp/use/room/data.html
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9454042_po_geppo150809.pdf?contentNo=1
http://www.kodomo.go.jp/event/exhibition/data.html
国立国会図書館国際子ども図書館企画協力課. 国際子ども図書館の取組み : これまでとこれから. 学校図書館. 2015, (779), p.28-30.