E1727 – 実験的ディスカバリサービス「NDLラボサーチ」の紹介

カレントアウェアネス-E

No.291 2015.10.29

 

 E1727

実験的ディスカバリサービス「NDLラボサーチ」の紹介

 

●はじめに

 国立国会図書館(NDL)次世代システム開発研究室は,当館が所蔵するデジタル化資料のデータや書誌情報などを用いて,東京大学や国立情報学研究所といった大学や研究機関と共同で次世代の図書館サービスの検討に資するための調査研究を行っており,その実験の場としてNDLラボを運営している。本稿ではNDLラボで公開している成果のうち,実験的なディスカバリサービスである「NDLラボサーチ」を紹介する。

●「NDLラボサーチ」の特徴

 「NDLラボサーチ」(以下本システム)は,当館が運用するディスカバリサービスである国立国会図書館サーチ(CA1762参照)の次期実装の参考とするため,検索画面の表示にAjax-Solrを採用し,新たに構築したディスカバリサービスである。Ajax-Solrはオープンソース全文検索エンジンであるSolrを,ユーザの操作と検索等の処理を並列で行うAjaxという技術で扱うライブラリである。Solr自体の検索速度だけでなく,操作に対する応答も高速であるため,本システムは約2,300万件というデータに対し快適な検索レスポンスを実現している。さらに(1)各コンポーネントの独立性が高い構成であること,(2)実験的な諸機能を実装しているという2つの特徴を有す。以下,それぞれについて記す。

(1)独立性の高いコンポーネント設計
 本システムはリソース層,API層,アプリ層の独立性の高い3層で構成している。この仕組みを用いることで,様々なニーズに応じたインタフェースを作成・提供するといった柔軟な運用を容易としている。

(2)実験的諸機能計
 今日の検索システムにおいては,膨大なデータの中から利用者が求めるデータをいかに素早く見つけるかが益々重要となっている。実装コンセプトや実験的機能のうち,ここでは(A)表示方法のカスタマイズ化,(B)画面遷移回数の削減,(C)NOTファセット,(D)著作数順ソートの4点について紹介を行う。

(A)表示方法のカスタマイズ化
 あらゆるユーザを満足させるシステムを作成するのは困難である。そこで本システムでは,ユーザが検索結果の表示形式を好みに応じて自由にカスタマイズできるようにした。現時点では,「小さく表示」「表」といった複数の表示方法を用意して,それらを簡単に切り替えられるようにしている。

 筆者の知る限り,ディスカバリサービスでは検索結果において資料をブロック状に並べて表示するのが一般的である。しかし,現在のところ利用者からは複数の資料を表示する際は本システムが提供するような表形式による表示が見やすいというフィードバックが得られている。

(B)画面遷移回数の抑制
 一般的にディスカバリサービスなどにおいて,ユーザは検索結果として提示された資料が求めるものであるかどうかを確認するために,その詳細情報を表示させる。しかし多くの場合,詳細情報の表示には画面遷移を伴うため,何度も結果表示と詳細情報の表示の面を往復することとなる。本システムでは検索結果の1つ1つをボタン風のデザインとし,それをクリックすることで画面遷移なしにある程度の詳細な情報を得られる設計としている。

(C)NOTファセット
 出版年や資料形態などを用いた絞り込み検索,いわゆるファセットを用いた検索は条件を累加させる「AND検索」のみが一般的であった。本システムでは新たに特定の条件を除外する「NOT検索」を実装した。膨大な資料が検索対象となるディスカバリサービスにおいて非常に重要な機能になると考えている。

(D)著作数順ソート
 ディスカバリサービスでは,検索クエリに対する適合度順で検索結果を表示することが一般的である。また,例えば刊行年月日順にソートしなおすことも可能だが,それらの手法のみでは利用者が求める資料を素早く見つけるには,まだ不十分である。具体的には,例えば,あるファンタジー小説の原作を見つけたいという需要に対し,単純にタイトルを入力して適合度順で表示するだけでは原作の解説本なども多くヒットしてしまう。このような需要を満たすため,原作の著者は解説本といった派生物の著者に比べ著作数が多いという仮定の下,それぞれの資料の著者の総著作数に基づく「著作数順ソート」を新たに実装した。ただし,本システムでは雑誌記事索引も検索可能であり,さらに雑誌記事の著者の著作数は非常に多いため,このソート単独では雑誌記事索引が常に上位を占めることになる。従って実際に使用する際は雑誌記事索引をNOTファセットで除外する操作と組み合わせることが必須だが,上記のような需要に対してはある程度有用な検索手法であると考えている。

●おわりに

 本システムでは本稿で紹介した諸機能以外にも様々な新しい機能を実装している。次世代システム開発研究室では,今後もさらに開発を進めたいと考えているので,是非お試しいただき意見・感想をお寄せいただければ幸いである。

筑波大学大学院図書館情報メディア研究科(国立国会図書館非常勤調査員)・池田光雪

Ref:
http://lab.ndl.go.jp/
http://lab.ndl.go.jp/cms/?q=about
http://lab.ndl.go.jp/ndls/
https://github.com/evolvingweb/ajax-solr
http://www.slideshare.net/lumely/ndlcode4lib-japan-2015
CA1762