E1548 – 21世紀のアクセスサービス<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.256 2014.03.27

 

 E1548

21世紀のアクセスサービス<文献紹介>

 

Krasulski, Michael J.; Dawes, Trevor A. eds. Twenty-First-CenturyAccess Services: On the Front Line of Academic Librarianship. Association of College and Research Libraries, 2013, 264p, ISBN: 978-0-8389-8666-0.

 大学図書館におけるアクセスサービス(E430参照)は,貸出,講義の指定図書の管理,相互貸借,書庫管理等の機能を含む包括的なサービス概念である。本書はポストデジタル環境下におけるアクセスサービスの決定的な重要性に鑑みて,13人の実務担当者が分担して米国の大学図書館におけるアクセスサービスの現状を吟味し,その価値とともに従来の枠組みを越え,新たなサービスを行うべく進化しつつあるアクセスサービス部門の活動を説明している。編者のクラサルスキ(Michael J. Krasulski)氏はフィラデルフィア科学大学の情報科学科助教兼アクセスサービス・コーディネータ,ドーズ(Trevor A. Dawes)氏はミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学図書館の副館長である。

 本書の第1部では,アクセスサービス機能の核である貸出と書庫管理(stacks management)を検討している。第2部では,コアサービスである相互貸借,指定図書管理,施設管理の他に利用者用PCやデジタルカメラの貸出,ラーニング・コモンズのようなスペースの代替利用等の領域を扱っている。電子リザーブ(e-reserves),電子書籍貸出への取り組み,著作権管理(E341参照)も含まれる。第3部では,キャンパス内と図書館組織内のアクセスサービス,担当部門の組織構造とイェール大学における組織改革,大学図書館の成功とアクセスサービスの関連,アクセスサービス機能の評価とベンチマークテスト,業務担当者のための情報源について説明している。結びで編者は今後5年ないし10年の間のアクセスサービスの方向性として(1)貸出カウンターとレファレンスカウンターの統合,(2)相互貸借の重要性の高まり,(3)冊子体資料の重要性の低下,(4)アクセスサービス担当者の責務の曖昧化,(5)顧客サービススキルの重要性の高まりを提示している。

 貸出や書庫管理が図書館業務の基本であることは論を俟たないが,わが国ではともすれば実務面に焦点が当てられ,サービスの基本方針や方向性について議論されることは少なかったといえよう。本書は,経済的にも人的資源の面でも厳しい環境におかれ,より少ない人員でより多くのサービスの提供を期待されている大学図書館にとって,アクセスサービスという視点からその業務やサービスを見直す際に恰好の手引きになると思われる。

筑波大学附属図書館・加藤信哉

Ref:
http://www.alastore.ala.org/detail.aspx?ID=10704
http://www.acrl.ala.org/acrlinsider/archives/7598
E341
E430