E1547 – 公共図書館における地域活性化サービスの創造<報告>

カレントアウェアネス-E

No.256 2014.03.27

 

 E1547

公共図書館における地域活性化サービスの創造<報告>

 

 国立国会図書館関西館図書館協力課では,2013年度の調査研究事業として,「地域活性化志向の公共図書館における経営に関する調査研究」を実施している。今回の調査研究では,地域のため新しい図書館サービスを実施している4つの事例を調査し,米国の事例と合わせて,それらがどのように生まれ,成長してきたのかについて研究を行っている。調査では,実際にサービスを担当している図書館員がその創造過程について報告を行い,シンクタンクの研究員と図書館情報学研究者がその報告を受けながら観察し,また分析を行う形で進められてきた。調査研究の結果がとりまとまりつつある2014年2月24日,「公共図書館における地域活性化サービスの創造:あのサービスはいかにして生み出されたのか」と題し,報告会を開催した。会場は国立国会図図書館の東京本館及び関西館(関西館は職員のみ対象)で,公共図書館員のほか,研究者や自治体職員など,計114名の参加があった。

 報告会前半では,4つの事例について,それぞれの図書館の担当者がその内容や創造過程についての報告を行った。紫波町図書館の手塚美希氏による「農業支援サービス事始め」では,地域の農業に関する企画展示や“ルーラル電子図書館”の講習会など,同館の農業支援サービスの一連の成長過程について説明があった。東松島市図書館の加藤孔敬氏による「ICT地域の絆保存プロジェクト『東日本大震災を語り継ぐ事業』」では,震災3年目を迎えた東松島市の現状と市民の震災体験談のアーカイブなどの事業についての説明があった。田原市中央図書館の天野良枝氏と河合美奈子氏による「高齢者福祉施設訪問サービス『元気はいたつ便』事業報告」では,そのサービス内容である“グループ回想法”の実際や団体貸出サービスの流れなどが説明された。東近江市立八日市図書館の山梶瑞穂氏による「リトルプレス『そこら』作成について」では,全国のリトルプレスの収集・展示,同市のまちづくりのネットワーク,また実際に作成したリトルプレス『そこら』の経緯などが説明された。

 後半では,大妻女子大学准教授の松本直樹氏が,「地域活性化に向けたサービス策定の分析」として,調査結果のまとめを提示した。その後,「地域のための図書館サービスのつくりかた」をテーマに,慶應義塾大学教授の田村俊作氏によるコーディネートで,松本氏及び事例報告者によるディスカッションと質疑応答を行った。会場からは,各館で苦労した事,実施体制や他の職員の理解,サービスへの反応,サービスの評価や改善方法など,数多くの質問が寄せられた。

 報告会の参加者からは,事後のアンケートにおいて,「報告を受ける前は,なぜ図書館がこれらのサービスを?と思っていたが報告を聞いて納得した。今後の図書館の可能性を感じた」,「どうやって最初の一歩を踏み出したのか知りたかったので,それが分かり良かった」,「事例報告が笑顔で生き生きと発表されていた。人とのつながり,行政部局とつながりの重要性を学ぶことができた」「小さな図書館でもできることがあると感じた。日常業務に流されずもう一度サービスを見直したいと思った」などの感想が寄せられた。

 報告会で発表した各事例の内容や背景のレポート,海外事例(ピッツバーグ・カーネギー図書館)のレポート,サービス創造時における経営面についての研究者による考察などを取りまとめた報告書は,刊行され次第,カレントアウェアネス・ポータル等を通じてお知らせする。新サービスの取り組みは大変なプロセスだと想像されるが,実際の立ち上げの過程には,たとえ困難な状況にあっても,朗らかに,生き生きと取り組む担当者の姿があった。地域活性化を目指して事業を興す公共図書館の実態を内外からの眼で調査・分析した本報告書を,ぜひご一読いただきたい。

図書館協力課調査情報係

Ref:
http://current.ndl.go.jp/node/25274