E1367 – カレントポータル担当者が見た第14回図書館総合展

カレントアウェアネス-E

No.227 2012.11.29

 

 E1367

カレントポータル担当者が見た第14回図書館総合展

 

 2012年11月20日から22日にかけて,第14回図書館総合展が,学術情報オープンサミット2012とともに,パシフィコ横浜で開催された。図書館総合展事務局の発表によると,3日間で計27,357名が来場し,過去最高を記録したとのことである。公式ウェブサイトにはフォーラムの動画記録や事務局の作成したレポートが公表されている。そのため,ここでは総合展全体を通じたまとめではなく,カレントアウェアネス・ポータル担当者が参加したフォーラムを中心に,この3日間の“祭典”を振り返ることにしたい。

 総合展1日目,筆者は,国立国会図書館(NDL)主催のフォーラム「電子図書館サービスの現在と図書館のこれから」の裏方を務めた後,筆者は,展示会場内で情報収集を行った。その際特に印象に残ったのが,「いわてを走る移動図書館プロジェクト」で東日本大震災発生直後から被災地支援を積極的に行っているシャンティ国際ボランティア会が使用している移動図書館である。筆者は想像よりも小さい印象を受けたが,3日目に参加した同会主催のフォーラムにおいて,仮設住宅には狭い道が多いために,このような小さい車を利用しているとの説明があり,得心した。

 総合展2日目の午前中,展示会場内の見学を行っていた際に,会場内で開催されていた,東北地域に所在する図書館員有志で結成されたみちのく図書館員連合(MULU)主催のフォーラム「東日本大震災:震災対応に関する疑問・質問にMULUが全力でお答えします!-体験と対策の共有をはかるために-」に参加した。このフォーラムは,震災当日における架空の大学の様子を再現した寸劇を上演したり,福島大学附属図書館との間でUSTREAMによる現地中継を行ったりするなど,趣向を凝らした内容であった。フォーラム後半では,MULUメンバーと参加者が車座となり,震災対応についての率直な意見交換が行われた。また,午後からは,NDLのブースでカレントアウェアネス・ポータルのミニプレゼンテーションを,その後はポスターセッションの報告を行った。そして,その日最後のフォーラムでは,NDL主催のフォーラム「高めよう,広げよう,情報専門職のコア技能!-国立国会図書館関西館の研修 徹底活用!!」に裏方として参加した。

 総合展最終日の3日目午前中は,国立情報学研究所(NII)主催のフォーラム「日本のナレッジベース構築に向けて-電子リソース管理データベース(ERDB)プロジェクトの現状と将来展望について」に参加した。現在校正中の次号の『カレントアウェアネス』に関連記事を掲載することから,その情報収集のためである。ここではNIIの田邊稔氏から,NIIが進める電子リソース管理データベース(ERDB)構築プロジェクトについて,デモ画面を交えながら解説が行われ,その後は,九州大学の片岡真氏から,英米におけるコミュニティベースのナレッジベース構築プロジェクト(“GOKb”と“Knowledge Base+”)の解説,実践女子学園情報センターの伊藤民雄氏から,日本語無料電子ジャーナルのデータベースJJRNaviの現状と課題について紹介があった。

 午後からは2つのフォーラムに参加した。1つは,既に述べたように,シャンティ国際ボランティア会主催のフォーラム「いわてを走る移動図書館プロジェクト 活動報告と今後の展望」である。このフォーラムでは,同会所属の現地スタッフが被災者のために建設した陸前高田コミュニティー図書室の運営にまつわる様々なエピソードを紹介した。また,「いわてを走る移動図書館プロジェクト」では今後,震災前の写真をデジタル化し,フォトアーカイブを構築する計画とのことである。

 もう1つのフォーラムは,凸版印刷株式会社主催の「MALUI連携とデジタルアーカイブの活用-新たな知の発見に向けて」である。ここではまず,立命館大学教授の湯浅俊彦氏から同大学におけるデジタルアーカイブ事業と「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点」の解説,続いて,京都府立総合資料館の福島幸宏氏から同館のデジタル化事業と2015年度に開設される新施設の紹介等が行われた。また,島根県立図書館の山田富美代氏から同館の貴重書デジタル化事業について,実務担当者として苦労した点等が報告された。歴史学を専攻した筆者にとっては,福島氏の報告にあった京都府立総合資料館の「文化資源コーディネーター」事業が特に興味深いと感じた。福島氏の説明によると,通常,文化財行政では指定文化財という枠から抜け出せず,そのために,指定を受けられないものの重要な史料の多くが眠ったままとなっている。この事業はその掘り起こしを狙ったもので,府内をまわって地域資料の調査を行い,デジタル化公開するとのことである。

 ウェブ情報を主体としているカレントアウェアネス・ポータルの日々の業務では触れることのできない,図書館界に関する様々なプロジェクトの最前線を知ることができ,大変充実した3日間であった。

(関西館図書館協力課・菊池信彦)

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2012/1196200_1827.html
http://sva.or.jp/iwate/
http://kokucheese.com/event/index/56303/
http://www.nii.ac.jp/event/libraryfair/
http://2012.libraryfair.jp/node/891
http://2012.libraryfair.jp/
http://2012.libraryfair.jp/node/917