E1299 – 図書館総合展フォーラム2012 in 仙台<報告>

カレントアウェアネス-E

No.216 2012.06.14

 

 E1299

図書館総合展フォーラム2012 in 仙台<報告>

 

 2012年5月27日,東北大学において,「図書館総合展フォーラム2012 in 仙台 図書館政策フォーラム2012『東日本大震災とMALUI連携』」が開催された。このフォーラムは,東日本大震災の記録を今後の防災・減災につなげるための,M(博物館),A(文書館),L(図書館),U(大学),I(企業)による連携および各機関による震災アーカイブ構築の推進について検討することを目的として開かれた。

 第1部では,まず国立国会図書館(NDL)の大滝則忠館長が「MALUI連携に向けて-国立国会図書館としての役割」と題して講演を行った。東日本大震災へのNDLの取組みとして,国会活動の補佐,被災した資料の救済,被災地の図書館支援の事例を紹介した。また,現在計画している東日本大震災アーカイブ事業では,刊行物や出版物といった紙資料だけでなく,動画や映像等のデジタル資料も収集対象としていること,様々な組織・団体と連携し,NDLも含めた各機関で収集しているコンテンツを一元的に閲覧できるシステムを構築すること等が述べられた。

 次に,事例報告として,東北大学災害科学国際研究所教授の今村文彦氏から「震災と大学-東北大学の取組から」,ヤフー株式会社R&D統括本部の高田正行氏から「Yahoo! JAPAN 東日本大震災からの考察」,防災科学技術研究所の長坂俊成氏から「311まるごとアーカイブスからMALUIに期待すること」と題した報告が行われた。今村氏の報告では,地震を予測できなかった反省を踏まえ,震災の記録を作成し後世に残すことで経験を継承することの重要性や,東北大学災害科学国際研究所によるアーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」の事業内容等について紹介された。高田氏の報告では,震災直後の交通インフラ・電力に関する情報提供や被災地からの情報発信に対するヤフーの支援活動,「写真保存プロジェクト」の事業内容,アーカイブ事業における民間企業と公的機関の役割等について語られた。長坂氏の報告では,被災者自らが記録し活用することの重要性,「311まるごとアーカイブス」の事業内容,震災アーカイブの利活用,各機関で果たすべき役割等について話された。

 第2部では,第1部の事例報告者である今村氏,高田氏,長坂氏のほか,総務省情報流通行政局の白石牧子氏,NDLの中山正樹電子情報部長を加え,せんだいメディアテーク企画・活動支援室長の甲斐賢治氏による司会のもと,パネルディスカッションが行われた。アーカイブ事業にかかる人手・コスト・スキルの確保,震災アーカイブ事業の継続性,国の機関を中心に各機関の果たすべき役割等について活発な議論がなされた。その中で,震災の記録の作成やデジタルアーカイブの構築にかかる技術およびノウハウを柔軟に支援する体制を作るべきである,被災地で真に使えるものにするために目的にあったメタデータを被災地で作成する仕組みを作ったらどうか,国の資料の保存についてNDLで呼びかけてはどうか,NDLで震災アーカイブのコンテンツのインターネット上での公開のガイドラインを策定してほしい,といった意見が出された。

 当フォーラムは,MALUIによる有機的な連携が,東日本大震災の記録と記憶の継承に大きな役割を果たすであろうことを改めて感じさせる内容であった。これを機に,更にMALUI連携が推進され,国全体として東日本大震災アーカイブの確実な構築に繋がることが期待される。

(電子情報部電子情報サービス課・長崎理絵)

Ref:
http://2012.libraryfair.jp/node/285
http://2012.libraryfair.jp/node/291
http://togetter.com/li/310584