E1298 – 大学・研究図書館の価値を評価するために求められる活動とは

カレントアウェアネス-E

No.216 2012.06.14

 

 E1298

大学・研究図書館の価値を評価するために求められる活動とは

 

 米国の大学・研究図書館協会(ACRL)が,大学・研究図書館の価値について発信していくための提言等をまとめた白書“Connect, Collaborate, and Communicate: A Report from the Value of Academic Libraries Summits”(2012年6月付)を刊行した。

 この白書はACRL等によって開催された会議が基になっている。ACRLはこれまでに「大学・研究図書館の価値に関するイニシアティブ」(Value of Academic Libraries Initiative)というプロジェクトを実施しており,その中で2010年に,大学・研究図書館の価値に関する文献レビューとそれを基に図書館の価値を説いた“The Value of Academic Libraries: A Comprehensive Research Review and Report”というレポートを刊行している。このたび刊行された白書は,そのレポートで示された提言に基づいてACRL等4団体が2012年11月29日から12月1日までに開催した2回の全米規模の会議を踏まえたものであり,白書にはその会議の内容と併せて図書館員に対する5つの提言がまとめられている。以下その提言の内容および提言とともに示されている図書館職員が次に採るべき活動についてそれぞれ紹介する。

 まず1つ目の提言は,学生の学習過程とその成果に関わる図書館の価値と影響力について,図書館員は理解を高める必要があるというものである。この提言に基づいた具体的な活動として,図書館の影響力とは何か,それをどのように把握すればよいか等の重要課題についての研究テーマを設定することや,図書館の評価活動を推進するため,データ集と管理ツール・システムを把握し,それらを作成,公開すること等の6項目が挙げられている。

 2つ目の提言は,学生の学習過程や成果に対する図書館の影響力を発信していくため,評価に関するコンピテンシーの重要性を明言しそれを促進していくというものである。この提言に従って提案されている活動として,評価業務を行う図書館員の配置の必要性を訴えること,図書館情報学大学院のカリキュラムに評価に関するコンピテンシーを含めるよう促進すること等の4項目が挙げられている。

 3つ目として,図書館がその所属機関の使命や目標に貢献していることを説明するような評価法について図書館員が学べるように,図書館員の専門性の発達の機会を作ることが提言されている。これを基に,図書館の価値や,評価計画,評価活動を高めるために,図書館員とその機関の代表者とが一堂に会する機会を作ること等の3つの活動項目が示されている。

 そして4つ目の提言は,高等教育を構成するグループおよび関連するステークホルダーとの間で,評価活動に関する連携を拡大させるというものである。これには,評価戦略の模索と図書館の成果の発展のため,高等教育に関わる外部のステークホルダーとの関係を構築すること,図書館評価の業務を推進すべく図書館と関連ベンダーは,製品の中に学習分析機能を組み込むこと等,5項目が示されている。

 最後に5つ目の提言では,図書館の価値に関してACRLがこれまでに作成したリソースを活用することとある。具体的には,図書館がその所属する大学に貢献していることについての認識を高めるため,ACRLのリソースを利用するための戦略を作成・公表すること等の3つが指摘されている。

 この白書の詳細や提言へのACRLの対応については,2012年6月の米国図書館協会(ALA)年次大会で開催されるフォーラムで取り上げられる予定となっている。

(関西館図書館協力課・菊池信彦)

Ref:
http://www.acrl.ala.org/value/?p=381
http://www.acrl.ala.org/acrlinsider/archives/5482
http://www.ala.org/acrl/sites/ala.org.acrl/files/content/issues/value/val_summit.pdf