カレントアウェアネス-E
No.227 2012.11.29
E1364
米国図書館に関するファクトデータ集2012年版を公表
米国図書館協会(ALA)図書館アドヴォカシー部が,“Quotable Facts About America’s Libraries 2012”を公開した。
これは,米国の公共・大学・学校図書館に関するファクトデータをコンパクトにまとめた資料で,図書館のアドヴォカシーに使用できるツールとして毎年作成されているものである。以下では,2012年版に掲載されている計21の項目を順次紹介する。それらを通して,ALAが,社会に対してどのように図書館の存在を主張しようとしているかという姿勢を見ていきたい。
●全体について
- 米国では成人の58%が公共図書館の利用カードを持っている。
- 米国人は映画館の3倍以上図書館(学校,大学,公共)に出かける。
- 公共及び大学図書館のレファレンスライブラリアンは1週間に約660万件の質問に回答している。質問者が一列に並ぶと,その長さはメリーランド州オーシャンシティからアラスカ州ジュノーに達する。
- 2012年のALAの調査では,回答者の94%が,公共図書館は市民に対して資料への無料のアクセスを提供しているため,あらゆる人に成功のチャンス を与えるという重要な役割を果たしていると同意した。
●技術の動向について
- 2010年時点,大学図書館全体で約1億5,870万点,公共図書館全体で1,850万点以上の電子書籍を所蔵していた。
- 2011年のPew Research Centerの調査では,図書館カード所持者の約24%が過去1年間に電子書籍を読んだと回答した。そのうち57%が電子書籍を借りることを,33%が購入することを好むと回答した。
- 2011~2012年のALA Libraries Connect Communitiesの調査では,76.3%の図書館が電子書籍を提供していると回答した。2010~2011年調査時よりも9%増加している。
●公共図書館について
- 米国にはマクドナルドより多くの公共図書館がある。分館込みで16,766館。
- 米国人は公共図書館よりもキャンディーに3倍お金をかけている。
- 国民1人当たりの貸出冊数は年間8冊である。また,国民1人当たりの公共図書館の費用は35.81ドルで,これはハードカバーの書籍1冊に相当する。
- 公共図書館の約89%が無線でのインターネットアクセスを提供している。
- 公共図書館の92%以上が求職中の人々へのサービスを提供している。
●大学図書館について
- 大学図書館は1年間で4,400万人以上の学生に情報を提供している。これは大学のバスケットボール試合の観客数よりも1,200万人多い。
- 単科大学の図書館予算は,高等教育予算1ドル当たり3セント以下である。
- 1990年以降,People誌の年間購読価格が大学図書館の雑誌価格と同様に上昇したとすると182ドルに及ぶ。
- 2010年時点で2年制及び4年制大学における図書館員1人当たりの学生数は584人である。比較すると,教員1人当たりの学生数は14人である。
●学校図書館について
- ある研究によると,最優秀の生徒たちは職員や資金の潤沢な図書館のある学校に通っている。
- 学校図書館における健康・医学分野資料は平均で1996年に出版されたものである。これらの資料では1997年のクローン羊「ドリー」や英国の香港返還について学ぶことはできない。
- 生徒が1年間に学校図書館を訪れる回数はのべ13億回である。これは2011年の映画館入館者数とほぼ同じで,国立公園入場者数の3倍である。
- 米国人は子どもたちの図書館資料よりもビデオゲームに18倍以上お金をかけている。
- 生徒1人当たりの資料費は12.06ドルである。これはフィクションの平均単価(17.63ドル)の約3分の2,ノンフィクション(27.04ドル)の約3分の1である。
なお,このファクトデータ集については,以上の数字の根拠について言及した解説付きバージョンも提供されている。様々な調査・統計で得られたファクトをアドヴォカシーへと活用しているこのようなALAの手法は参考になろう。
(関西館図書館協力課・林豊)
Ref:
http://www.ala.org/offices/ola/quotablefacts/quotablefacts
http://www.ala.org/offices/sites/ala.org.offices/files/content/QuotableFacts.2012_0.pdf
http://www.ala.org/offices/sites/ala.org.offices/files/content/QF2012_annotatedFINAL_2.pdf