E1294 – MLA機関でのソーシャルメタデータ活用における推奨事項

カレントアウェアネス-E

No.215 2012.05.24

 

 E1294

MLA機関でのソーシャルメタデータ活用における推奨事項

 

 2012年4月23日に,米国のOCLCの研究部門OCLC Researchが,“Social Metadata for Libraries, Archives and Museums Part 3: Recommendations and Readings”と題した報告書を公表した。これは,図書館・博物館・文書館等のMLA機関におけるソーシャルメタデータの活用をテーマとした一連の報告書の最後を飾るもので,2011年9月発表の第1部及び2012年1月発表の第2部(E1261参照)を受けて,各機関に対する推奨事項をまとめている。

 ソーシャルメタデータは,タグやコメントのように,ウェブサイトのコンテンツに対してユーザが提供する情報で,コンテンツを発見・理解・評価するために役立つものとしており,ソーシャルメディアと切り離すことができないと述べている。社会と関わるということ自体は,これまでもMLA機関の活動のなかに位置付けられてきた。ソーシャルメディアはその関わりを拡張するツールであると捉えられている。著者らは,MLA機関がソーシャルメディアを活用せずにユーザと関係を持たないでいることは危険だと確信しており,各機関がそれぞれの目的や投入可能な資源等を考慮しつつ,計18点の推奨事項から必要なものを選択して実施することを薦めている。推奨事項の一部を以下で紹介する。

  • ソーシャルメディアを使用する目的を明確にすること。
    ソーシャルメディアをマーケティングツールとして使用したい機関側と,ユーザと双方向のコミュニケーションを取りたい職員側の間でズレが生じることがあるが,ソーシャルメディアを用いる目的をはっきりさせることで,どのような機能をいかに用いるのかが決まってくる。
  • ユーザのコンテンツ提供につながる動機付けを行うこと。
    ユーザが貢献したくなるようなしかけをウェブサイトのなかにデザインする必要がある。そのためには,明確な目標を明示する,作業を簡単で楽しいものにする,貢献の度合いによるランキングを表示する,ユーザを盛り立ててサポートを行うマネージャーを登用する等の方法がある。
  • 成果を測定するための評価指標を決めること。
    このような指標の設定は難しい。量的評価のための分析ツールは存在するが,質的評価は主観的になる。指標は目的やターゲットとするユーザ層に応じて決まる。例えば,目的が「メタデータの誤りの訂正」である場合には,量的指標として,訂正されたメタデータの数やそれに関わったユーザの数等が,質的指標として,訂正によってそのメタデータの価値が向上したか等が設定できる。
  • 外部のソーシャルメディアを利用する長所・短所を検討すること。
    Flickr,Facebook,Twitter等の既にユーザが多い外部サービスを採用すれば,短時間で必要な機能を導入でき,自館コレクションの知名度向上等の大きな効果が得られる。しかし,サービス側の機能・ポリシーの変更によってユーザが作成したコンテンツを提供できなくなることはないのかといった懸念もある。
  • ユーザが作成したコンテンツを表示し,検索インデクスに含めること。
    調査に回答したウェブサイトの半分はユーザが作成したタグをそこに表示しておらず,3分の1はユーザが提供したコンテンツを検索インデクスに含めていなかった。ソーシャルメタデータを導入するのであればそれらを全て表示し,検索できるようインデクスに含めるべきである。

 推奨事項に続いて,「ユーザが作成したコンテンツで他のサイトと共有できるものには何があるか」「ユーザによるコンテンツの所有権に係る問題は何か。他のシステムにメタデータを提供する際の影響は何か」等,今後検討すべき課題が示されている。また,後半(報告書の大半を占める)では,参考文献が詳しい解説付きでリストアップされている。

 なお,この第3部とあわせて,一連の報告書全体をまとめた要約版も公表されている。

(関西館図書館協力課・林豊)

Ref:
http://www.oclc.org/research/news/2012-04-23.htm
http://www.oclc.org/research/publications/library/2012/2012-01.pdf
http://www.oclc.org/research/publications/library/2012/2012-02.pdf
E1261