E1261 – 図書館等におけるソーシャルメタデータ活用の実態調査報告書

カレントアウェアネス-E

No.209 2012.02.09

 

 E1261

図書館等におけるソーシャルメタデータ活用の実態調査報告書

 

 2012年1月16日,米国OCLCの研究部門OCLC Researchが,“Social Metadata for Libraries, Archives and Museums”と題したレポートの第2部(2011年12月付)を公開した。3回に分けて公開が予定されている一連のレポートは,図書館・博物館・文書館(MLA)等の機関のウェブサイトにおいて,タグ付けやコメント付与といったソーシャル機能を用いてユーザーが作成した,いわゆるソーシャルメタデータ(social metadata)の活用をテーマとしたものである。

 第1部のレポートでは,ソーシャル機能を用いたMLA機関の76のウェブサイトについて2009年から2010年にかけて調査したレビューがまとめられている。今回の第2部のレポートでは,第1部のレポートで調査したウェブサイトの管理者に対して,ウェブサイトで使われている技術や運営体制,評価基準等について質問し,その結果得られた回答の分析結果がまとめられている。なお,各質問に対する回答機関数がそれぞれ異なっている点に注意が必要である。以下,調査結果の一部を紹介する。

  • 回答した42機関のうち,60%が米国内の機関で,19%がオーストラリア,10%が英国,そして5%がニュージーランドの機関であった。
  • 42の回答機関の71%がソーシャル機能を導入してから2年以下と答えた。ソーシャル機能を4年以上提供していると回答したのは19%であった。
  • 提供しているソーシャル機能のうち上位3つは,コメント付与(82%)やタグ付け(67%),RSSフィード(54%)であった。
  • タグ付け機能を提供している24機関のうち,既存のタグをユーザーに見えるようにしていると回答したのは半数の12機関であり,8機関(33%)がユーザーの付けたタグと機関が管理している統制語の一体化を行っていると答えた。
  • 自由回答欄に回答のあった32機関のうち,63%がソーシャルメタデータを利用していると回答した。また61%がユーザーの提供したメタデータをインデキシングして検索に利用しているとし,71%がユーザーの提供したコンテンツを検索可能な状態にしていると回答した。
  • ユーザーによるコンテンツ登録に何らかのチェックを行っていると回答したのは36機関のうち75%であり,半数が公開前に編集を行っていた。
  • 回答のあった35機関のうちの77%が,コンテンツの編集や削除の権限,個人情報保護等に関する基本方針を採択していた。機関ごとにその基本方針は大きく異なるものの,そこにはコンテンツをソーシャル機能とともに提供することに配慮する機関側の姿勢が表れていた。MLA機関は,ユーザーにとって安全な環境の提供や,権利保護に関する職業倫理保持に努めていた。

 今後公開予定の第3部のレポートでは,MLA機関向けのソーシャルメタデータ機能に関する提言等がまとめられるとのことである。

Ref:
http://www.oclc.org/research/news/2012-01-16.htm
http://www.oclc.org/research/publications/library/2011/2011-03.pdf