カレントアウェアネス-E
No.207 2011.12.22
E1251
欧州4か国の研究データ管理の現状と課題に関する報告書
2011年11月付けで,デンマークの電子研究図書館(DEFF)やドイツ研究財団(DFG)等の4機関が共同で運営しているKnowledge Exchange(KE)が,“A Surfboard for Riding the Wave – Towards a four country action programme on research data”と題するレポートを公開した。これは,2010年10月に公開された,欧州委員会(EC)情報社会・メディア総局の「科学データに関するハイレベルグループ」による最終報告書(E1112参照)を踏まえたもので,レポートではKEに参加しているドイツ,デンマーク,英国,オランダの4か国における研究データ管理に関する現状とその課題とともに,共同データインフラの構築に向けた行動計画がまとめられている。
まずレポートでは,研究データ作成者としての研究者に対するデータ共有と公開のための動機付けとして,データの再利用とデータ作成者への評価,学術団体の行動規則・規範,助成機関からの要求,データ利用に関するジャーナルの方針の4点が指摘されている。
次に,莫大な量の研究データを再利用するためには新たなスキルが求められるとして,データ利用に携わる3種の担当者を挙げている。1つ目は,データ運用に関する基礎的なスキルを備えた研究者,2つ目はデータ設備・保管・アクセスに関する責任を負う「データサイエンティスト」,3つ目はデータのキュレーション・保存・アーカイビングを担当する「データライブラリアン」である。この「データライブラリアン」については,研究者支援の流れの中で,研究図書館員にデータライブラリアンとしての役割が求められているとし,そのための研修や養成教育が体系的に行われている例は少ないながらもドイツ等で行なわれていることが指摘されている。
レポートでは機関ごとのデータインフラと分野別の国際・国内のデータインフラを区別して論じている。そして,特に,作成されたデータとその保存先とのミスマッチや,データインフラと研究者のワークフローとの間,機関ごとのデータインフラと国レベルのデータインフラとの間の接続性について課題があると述べている。また,費用便益に関する調査結果やデータ保存を行うデータセンター等の財政状況を踏まえ,データインフラの財政基盤の現状と課題も指摘している。
最後に,上に記した現状と課題を踏まえ,3つの長期的戦略目標として,(1)データ共有が学術文化の一部となること,(2)データ管理が研究者にとって必須のものとなること,(3)データインフラが操作性と財政基盤の双方の点で安定したものとなることを掲げている。
Ref:
http://knowledge-exchange.net.dynamicweb.dk/Default.aspx?ID=469
E1112