E110 – 米国愛国者法をめぐる最近の動き

カレントアウェアネス-E

No.20 2003.08.20

 

 E110

米国愛国者法をめぐる最近の動き

 

 連邦捜査局(FBI)に強大な捜査権限を与えた米国愛国者法に対する訴訟が7月30日,米国自由人権協会(American Civil Liberties Union : ACLU)によってデトロイトの連邦地裁に提訴された。訴えの中でACLUは,国民の個人情報を容易に入手できる権限をFBIに与え,またFBIの捜査を受けたことを外部に表明することを禁じた同法の第215条(注)は,言論の自由等を保障する合衆国憲法修正第1条や不当な捜査・押収を禁じる同修正第4条に抵触すると主張している。

 また訴訟と並行して,ニューメキシコとフロリダのACLUの地方支部は,自由の女神の写真を背景にしたポスターを作製して図書館に配布し,愛国者法のもとでFBIによって図書館の利用記録が秘密裡に捜査される危険性を図書館の利用者に訴えかけるキャンペーンを展開している。

 一方,連邦議会では,FBIの捜査権限を愛国者法成立以前の状態まで制限しようとする2つの法案「図書館,書籍販売者及び個人記録保護法案」(S.1507),「個人の権利を保護する法律案」(S.1552)が7月31日に相次いで提出された。なお,3月には,サンダース(Bernie Sanders)下院議員によって,図書館および書籍販売者の記録を秘密裡に政府が閲覧することを禁じる「読書の自由保護法案」(H.R.1157)も提出されている。

(注)図書館の利用記録がFBIの捜査の対象となり利用者のプライバシーが侵害される危険があるとして図書館界からも批判を受けている。

Ref:
http://www.ala.org/al_onlineTemplate.cfm?Section=American_Libraries&template=/ContentManagement/ContentDisplay.cfm&ContentID=40212
http://www.ala.org/al_onlineTemplate.cfm?Section=American_Libraries&template=/ContentManagement/ContentDisplay.cfm&ContentID=40211
http://www.ala.org/al_onlineTemplate.cfm?Section=American_Libraries&template=/ContentManagement/ContentDisplay.cfm&ContentID=40209
平野美惠子ほか.米国愛国者法(反テロ法)(上).外国の立法,(214),2002,1-46.
平野美惠子ほか.米国愛国者法(反テロ法)(下).外国の立法,(215),2003,1-86.
高木和子.米国愛国者法と図書館のプライバシー保護.情報管理.45(8),2002,580-583.