E1022 – 授業へのKindle導入について大学と視覚障害者団体が和解(米)

カレントアウェアネス-E

No.166 2010.02.17

 

 E1022

授業へのKindle導入について大学と視覚障害者団体が和解(米)

 

 2009年秋から米国の複数の大学において,授業の一部にAmazon社の電子書籍リーダー“Kindle DX”を導入するという試みが行われた。これに対し,視覚障害者団体が,視覚障害者への対応が不十分な機器を授業に用いることは情報アクセスの平等性の点で問題があるとして大学を訴えるなどしていたが,2010年1月には司法省も関与した和解に至り,一応の収束を見た。

 Amazon社との共同による,大学の授業へのKindle DXの試験的導入プロジェクトは2009年5月に発表され,アリゾナ州立大学,ケース・ウェスタン・リザーブ大学,ヴァージニア大学ダーデンビジネススクール,ペース大学,プリンストン大学,リード・カレッジなどの大学で,2009年の秋の学期から一部の授業で導入されることとなった。また,このプロジェクトとは別に,シラキュース大学とウィスコンシン大学マディソン校でも同時期にKindle DXの試験的導入が行われた。

 Kindle DXには本文の音声読み上げ機能(E894参照)が付いているものの,メニュー画面には音声ガイドがなく,視覚障害者は援助なしでは電子書籍の購入・選択などができない。この点を問題視した全米視覚障害者連合(NFB)と米国視覚障害者委員会(ACB)は,プロジェクトの開始に先立つ6月に,障害者への差別を禁じた米国障害者法(ADA)に反しているとして,視覚障害を持つアリゾナ州立大学の学生とともに同大学に対し訴えを起こし,プロジェクトに参加しているその他の大学についても,司法省に苦情を申し出た。

 こうした中で秋の新学期から試験的導入が開始されたが,11月には,シラキュース大学とウィスコンシン大学が,視覚障害者への対応がなされるまではこれ以上の導入をしないことを決定した。2010年1月には,11日にアリゾナ州立大学とNFB等との和解が成立したのに続き,13日には,ケース・ウェスタン・リザーブ大学,ペース大学,リード・カレッジの3校が,試験プロジェクト終了後はKindle DXの追加購入や推奨をしないこと,電子書籍リーダーを導入する場合には障害者対応の機器にすること等の内容でNFB及びACBと合意したことを,司法省が発表した。Amazon社は,メニュー画面の音声ガイドや拡大文字に対応した改良版のKindleを2010年中ごろに出す見込みとされている。

Ref:
http://www.computerworld.jp/topics/bg/171890.html
http://www.govtech.com/gt/articles/726562
http://www.nfb.org/nfb/NewsBot.asp?MODE=VIEW&ID=449
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2009/11/10/financial/f210203S00.DTL
http://www.msnbc.msn.com/id/34317256/ns/technology_and_science-tech_and_gadgets/
http://www.nfb.org/nfb/NewsBot.asp?MODE=VIEW&ID=527
http://www.justice.gov/opa/pr/2010/January/10-crt-030.html
http://www.nfb.org/nfb/NewsBot.asp?MODE=VIEW&ID=536
E894