カレントアウェアネス-E
No.166 2010.02.17
E1021
EBSCO社による一般雑誌コンテンツ独占契約が呼んだ波紋(米)
米国では,データベースベンダー大手のEBSCO社が複数の有力出版社と締結した,一般雑誌コンテンツの独占契約が波紋を呼んでいる。
事の発端は,2010年1月15日から19日にかけて開催された米国図書館協会(ALA)の冬季大会でのEBSCO社の発表であった。EBSCO社が,Time社やForbes社の人気雑誌を含む,一般雑誌のフルテキストを独占的に提供することが明らかになったのである。この発表が行われた昼食会への参加者のブログによると,対象となる予定の雑誌には, “Time”“Forbes”“Harvard Business Review”“Sports Illustrated”などが含まれるということである。
EBSCO社のこの動きに対し,業界のライバルであるGale社は2010年1月18日,図書館関係者に宛てた公開書簡をウェブ上で発表した。この中でGale社は,EBSCO社は独占契約のために多額の契約金を支払っており,これは結局,図書館とのデータベース契約料の値上げに繋がること,出版社は独占契約を望んでいなかったと考えられること,などを指摘し,EBSCO社の排他的な契約を批判した。さらに図書館関係者に対し,情報へのアクセスを制限するという図書館の理念に反する行為に歯止めをかけようと訴え,共闘を求めている。
Gale社の公開書簡から一週間後の1月25日,EBSCO社はGale社の主張への反論状をウェブ上で発表した。EBSCO社は,多くの主要雑誌を含む単一のデータベースと契約することにより,重複契約を回避することができ,図書館は費用を節約できること,Time社の場合,独占契約を望んだのはEBSCO社ではなくTime社であること,Forbes社は入札に参加した複数のプロバイダの中から,EBSCO社を選んだに過ぎないこと,などを挙げ,Gale社の推測は誤りであるとした。そして,「図書館は,自身のミッションとニーズを支持する情報プロバイダと連携すべきだと,Gale社の書簡にあるが,われわれもそれに同意するし,われわれはそのような情報プロバイダの1つである」と皮肉を込めた一言で,反論状を締めくくっている。
同じくEBSCO社のライバルであるProQuest社はLibrary Journal誌の取材に対し,「ProQuestの顧客への影響は極めて小さい」と答えており,事態を静観している模様である。
上記の一連の騒動について,American Libraries誌(ALAの機関誌)のウェブ版は,「1つ確かなのは,EBSCOの独占契約がどのように図書館の予算に影響するかを,米国中のライブラリアンが注視していくだろうということである」と予想している。
Ref:
http://www.gale.cengage.com/fairaccess/index.htm
http://www.ebscohost.com/special/temp01-2010/EP-Response-to-Gale.pdf
http://newsbreaks.infotoday.com/NewsBreaks/EBSCO-Exclusives-Trigger-Turmoil-60836.asp
http://www.americanlibrariesmagazine.org/news/01262010/ebsco-gale-spar-over-exclusivity
http://www.libraryjournal.com/article/CA6716120.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6716017.html
http://distlib.blogs.com/distlib/2010/01/ebsco-exclusive-content-.html