経営破綻したカレッジ図書館の悲劇(米国)

米国アラスカ州最古の高等教育機関であるシェルドン・ジャクソン・カレッジが2007年6月29日、経営破綻により全教職員の解雇を通知しました。学生には何も連絡がないとのことですが、事実上の閉鎖です。

このカレッジの図書館長(兼、資料保存の有給コンサルタント)も、就任から1年も経たない時点で、解雇となりました。解雇通告の後、図書館員や地元の有志からなる図書館委員会は、カレッジの理事会に対し、図書館蔵書を近隣の大学に寄贈するよう勧告したのですが、カレッジの再建を望む理事会はこの勧告を拒絶しました。そこで館長をはじめ、20名近くの図書館員や博物館学芸員、関心のある人々からなるグループが、無給のボランティアとして引き続き、同館の貴重資料の保存に取り組んできました。この様子を、American Libraries誌が紹介しています。

同館の創立は1878年で、130年の歴史を有することから、20世紀初頭の写真乾板923点、1,000点以上のアラスカ関係貴重書などを所蔵していますが、経営破綻のためサーバが撤去されOPACが使えず、冷暖房が入らないので温湿度管理もできず、また水道管が凍結・破損する恐れがあるという状況でした。ボランティアはタイプライターで印刷した目録を手がかりにして、貴重資料を水道管から離れた部屋に移動させる作業を行いました。また州中の図書館・文書館が保存用の器材を寄付し、除湿装置も導入されました。ところが、カレッジが新しいキャンパス管理業者を決めたことにより、ボランティアによる月1回の作業は終了させられました。2008年8月19日、数か月ぶりに(元)館長がカレッジを訪れたとき、もともと歴史的な資料があった部屋は雨漏りし、ひどくかび臭いにおいが建物全体に充満していたとのことです。

見かねた地域の図書館コンソーシアムが2008年8月12日、カレッジ理事会に対し、カレッジ図書館の資料を近隣の図書館が分散して保管し、カレッジ再建後に返却するというプランを認めてほしいと提案したのですが、理事会はこの提案を原則として受け入れたものの、文案から「実施(implement)」という文言を削除し、実効性のないものにしてしまった、とのことです。

ALA | American Libraries – Alaska College’s Shutdown Threatens Historic Collections
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2008/august2008/sheldonjackson.cfm

Humidity, mold threaten Stratton Library collection – KCAW – Public Radio in Sitka, Alaska
http://kcaw.org/modules/local_news/index.php?op=centerBlock&ID=214

Sheldon Jackson College Watch
http://www.sjcwatch.blogspot.com/
Sheldon Jackson College – Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Sheldon_Jackson_College