2021年4月14日付で、学術情報流通に関連した多様な話題を提供する学術出版協会(Society for Scholarly Publishing:SSP)運営のブログ“Guest Post – An Early Look at the Impact of the Chinese Academy of Sciences Journals Warning List”と題された記事が掲載されています。執筆者はScholarly Intelligence社の創業者兼チーフアナリストであるChristos Petrou氏であり、中国科学院が公開した危険な国際学術誌のリスト(試行版)とリストが中国の研究者の学術出版に及ぼした影響について述べられています。
2020年末に、中国科学院は危険な国際学術誌のリスト(試行版)を公開しました。リストには65誌含まれており、そのうち43誌が完全オープンアクセス(OA)ジャーナルであり、中国の研究者の論文が占める割合が比較的高いものです。また、65誌のうち40誌が2020年に1,000報以上の論文を掲載している規模の大きいジャーナルであると述べています。このリストに含まれるジャーナルの条件としては、取り下げられた論文の報数、ジャーナルの自己引用、却下率、APCの支払いの有無等が挙げられていますが、APCの支払いに中国からかなりの額が支出されている点に焦点が当てられているように見えることを指摘しています。
記事では、リストに掲載されているジャーナルの内、IEEE AccessとMDPIの学術雑誌の論文報数について、分析を行っています。IEEE Accessでは、2021年第1四半期の論文報数が前年と比較すると24%減少していることが指摘されています。この減少は、中国の研究者が投稿しなくなったことが原因とされています。減少は、IEEE Accessのインパクトファクターが4.0を下回った後からはじまり、リストの公開後に加速したと述べています。MDPIのジャーナルでは、2021年の第1四半期に、中国のコンテンツが8%減少していることが指摘されています。
このリストの公開時期(2020年末)と査読に要する時間を考慮すると、このリストによる影響は、第2四半期までにさらに明らかになると述べられています。
Guest Post – An Early Look at the Impact of the Chinese Academy of Sciences Journals Warning List(The Scholarly Kitchen,2021/4/14)
https://scholarlykitchen.sspnet.org/2021/04/14/guest-post-an-early-look-at-the-impact-of-the-chinese-academy-of-sciences-journals-warning-list
参考:
米国・カナダ・ラテンアメリカの大学図書館におけるハゲタカ出版に対する取り組み(文献紹介)
Posted 2020年8月11日
https://current.ndl.go.jp/node/41711
CA1960 – ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から / 千葉 浩之
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1960
匿名の研究者により続けられる「ハゲタカ出版」の監視(記事紹介)
Posted 2018年3月27日
https://current.ndl.go.jp/node/35731