米国における電子書籍貸出の最新動向:米・メリーランド州の法案等(記事紹介)

国際図書館連盟(IFLA)著作権等法的問題委員会(CLM)のページに、2021年4月6日付けでIFLAが行ったインタビュー記事“Promise, progress… and persistent problems: catching up on the situation for eLending in the United States”が掲載されています。米国における電子書籍貸出(eLending)の最新動向について、米国図書館協会(ALA)のSari Feldman氏、Alan Inouye氏に尋ねています。

2020年4月にも、IFLAは同じテーマでSari Feldman氏にインタビューを行っていました。今回のインタビューでは、前回インタビュー以降の11か月間における主要な進展を扱っており、新型コロナウイルス感染症流行下における出版社の対応や、Amazon刊行の電子書籍が図書館向けに販売されていない問題等に言及しています。

また、公共政策面での進展にも言及しており、特に、2021年3月に米・メリーランド州議会で可決された法案に注目しています(現在は同州知事の署名待ち)。同法案は、一般向けに電子書籍(electronic literary product)のライセンス提供を行う出版社に対し、同州の図書館が利用者に当該電子書籍へのアクセスを提供できるよう、「合理的な条件」(reasonable terms)下での図書館向けライセンスの提供を求める内容となっています。

インタビューでは、米国の州議会で同種の法案が可決されたのは初めてであり、他の州にとっては先行事例となる成果であるとしています。同法の成立を楽観視しているとしながらも、「合理的な条件」の具体的内容には異なる見解があり得るため今後の議論がどう展開するかは未知数であることや、同法に反対するロビー活動が行われていること等に触れています。

Promise, progress… and persistent problems: catching up on the situation for eLending in the United States(IFLA, 2021/4/6)
https://www.ifla.org/node/93806

関連:
Public Libraries – Electronic Literary Product Licenses – Access(Maryland General Assembly)
https://mgaleg.maryland.gov/mgawebsite/Legislation/Details/hb0518
※2021年3月に米・メリーランド州議会で可決された法案です。

Want to borrow that e-book from the library? Sorry, Amazon won’t let you.(The Washington Post, 2021/3/10)
https://www.washingtonpost.com/technology/2021/03/10/amazon-library-ebook-monopoly/
※Amazon刊行の電子書籍が図書館向けに販売されていない問題を扱った、米・ワシントンポストの記事です。

参考:
CA1978 – 動向レビュー:米国での電子書籍貸出をめぐる議論 / 井上靖代
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1978

CA1979 – 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳)
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1979