米国科学振興協会(AAAS)、Science誌及びその姉妹誌においてcOAlition Sの研究助成成果に当たる受理済論文にCC BYまたはCC BY-NDライセンスの付与を容認

2021年1月15日、米国科学振興協会(AAAS)は、オンラインニュース配信サイト“EurekAlert!”で、Science誌及びその姉妹誌の合計6誌において、オープンアクセス(OA)出版の条件が更新され、cOAlition Sから助成を受けた研究者は、受理済の論文にCC BYまたはCC BY-NDライセンスを付与できるようになったことを発表しました。

AAASはこのOA出版に関する新方針の背景として、Science Advances誌によりゴールドOAを進める一方で、他の5誌では長年に渡ってグリーンOAを支援してきたこと、ゴールドOAのみの促進では、過大な金銭的負担により、人種・ジェンダー・地域・分野・機関に関する研究者間の不平等が温存・助長される懸念を持っていることを挙げています。

この新方針は、2021年1月1日以降にScience誌及びその姉妹誌に投稿された論文のうち、プランSの「権利保持戦略」を採択済のcOAlition S加盟機関から助成を受けた研究成果に該当する論文に適用されます。

Science誌は同日付のオンライン版記事で、同方針の策定について触れた記事を掲載しています。同記事では、新方針により査読を経た著者最終稿をOAリポジトリへ掲載可能となったこと、新方針は収益への影響を見極めるため1年間試験的に実施されること、Science誌に論文掲載料(APC)を設定した場合Nature誌及び関連誌の最高料金である9,900ユーロに近い水準となることが予想されたため敢えてゴールドOAによるOA化を選択しなかったこと、米・マサチューセッツ医学会(Massachusetts Medical Society)や英国王立協会(Royal Society)をはじめとする非営利の学協会で類似の方針がすでに採用されていること、などを紹介しています。

また、cOAlition Sは同日付で、AAASの決定を歓迎するお知らせを発表しています。

Focused on author choice & research quality, AAAS announces new OA policy(EurekAlert!,2021/1/15)
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-01/aaft-foa011421.php

Science journals to offer select authors open-access publishing for free(Science,2021/1/15)
https://doi.org/10.1126/science.abg5856

Open Access at AAAS(Science)
https://www.sciencemag.org/authors/open-access-aaas

cOAlition S welcomes AAAS decision to support the sharing of author accepted manuscripts(cOAlition S,2021/1/15)
https://www.coalition-s.org/coalition-s-welcomes-aaas-decision-to-support-the-sharing-of-aams/

参考:
CA1990 – 動向レビュー:プランS改訂版発表後の展開―転換契約等と出版社との契約への影響 / 船守美穂
カレントアウェアネス No.346 2020年12月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1990

E2346 – 著作権とライセンスからみるオープンアクセスの現況
カレントアウェアネス-E No.406 2021.01.14
https://current.ndl.go.jp/e2346

cOAlition S、研究者の知的所有権を保護し不当なエンバーゴを抑止するための「権利保持戦略」を策定・公表
Posted 2020年7月16日
https://current.ndl.go.jp/node/41517

「プランS」の発効と研究成果物のオープンアクセス(OA)化を巡る最新の論点(記事紹介)
Posted 2021年1月14日
https://current.ndl.go.jp/node/42985

Elsevier社、Cell Pressの学術誌でのオープンアクセス出版オプションの提供範囲を拡大:“Cell”も対象
Posted 2020年12月28日
https://current.ndl.go.jp/node/42884

シュプリンガー・ネイチャー、2021年1月よりNature誌のオープンアクセス(OA)オプション提供と提案型OAの試験的運用を開始
Posted 2020年11月26日
https://current.ndl.go.jp/node/42618