日本における研究データの公開・利用条件の明確化を目的としたワークフローの検討と開発(文献紹介)

2020年12月28日付で、“Data Science Journal”誌第19巻に、国立情報学研究所(NII)オープンサイエンス基盤研究センター(RCOS)の南山泰之氏をはじめとする5人の共著論文として、“Investigation and Development of the Workflow to Clarify Conditions of Use for Research Data Publishing in Japan”が掲載されています。

同文献は、分野の枠を越えて研究データを取り扱うための基盤を整備し利用条件を明確化・標準化することを目的として、研究データ利活用協議会(RDUF)研究データライセンス小委員会が、2017年12月から2018年3月にかけて実施したインタビュー調査・アンケート調査の内容と分析、及び、調査結果を受けた研究データの公開・利用条件に関するガイドラインの作成について報告する内容です。

同小委員会は「研究データの利活用における制約」、「研究データ保有者のデータ公開時の要望」、「研究データの保有者・利用者双方の要望を汲みながら再利用を促進するための支援」について探るインタビュー調査とアンケート調査を実施しました。インタビュー調査はデータリポジトリ実務の専門家に対して行われ5人から回答を得ており、アンケート調査はオンラインアンケート形式で行われ研究者・データ管理者・図書館員等から409件の有効回答を得ています。同文献は、それぞれの調査の結果の詳細を示すとともに、調査分析の結果から研究データ公開の阻害要因には、法慣習等の外部的な制約、及び必ずしも標準化されていないデータ保有者の意向の2つが存在し、ガイドラインの設計の留意事項としたことなどを報告しています。

調査結果を受けて2019年に策定された「研究データの公開・利用条件指定ガイドライン」については概略を示しながら、実用に供することを優先し既存のライセンスツールと整合した望ましい要件を提示する内容であるため、調査分析の中で利用条件のカテゴリーへの追加の指摘があった点に未対応であるなど、将来の更新で解消すべき課題を残していることを報告しています。

Minamiyama, Y.; Ikeuchi, U.; Ueshima, K.; Okayama, N.; Takeda, H. Investigation and Development of the Workflow to Clarify Conditions of Use for Research Data Publishing in Japan. Data Science Journal. 2020, 19.
http://doi.org/10.5334/dsj-2020-053

関連:
研究データのライセンス検討プロジェクト(RDUF)
https://japanlinkcenter.org/rduf/deliverable/index.html#s004

研究データライセンス(RDUF)
https://japanlinkcenter.org/rduf/deliverable/index.html#s003

参考:
E2250 – 研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定
カレントアウェアネス-E No.389 2020.04.23
https://current.ndl.go.jp/e2250

E1871 – 研究データの法的相互運用性:指針と実施のガイドライン
カレントアウェアネス-E No.317 2016.12.22
https://current.ndl.go.jp/e1871

研究データ利活用協議会(RDUF)研究データのライセンス検討プロジェクト小委員会、研究データのライセンスに関するアンケート調査を実施中
Posted 2018年2月14日
https://current.ndl.go.jp/node/35481