Europeana によるEU孤児著作物指令への評価(記事紹介)

Europeana Proの2020年11月19日付け記事“Evaluating the Orphan Works Directive”で、欧州委員会(EC)が実施したEU孤児著作物指令(2012年10月採択)に関する調査へのEuropeanaの回答が紹介されています。筆者はEuropeana財団のポリシー・アドバイザーであるAriadna Matas氏です。

ECの調査は2020年8月から10月にかけて行われ、孤児著作物のデジタル化・流通を促進する手段としてのEU孤児著作物指令の効率性・有効性の評価が行われました。87の機関が調査に回答しています。

記事では、EU孤児著作物指令には、規定の範囲が限定されている、要件が煩雑、法的な不確実性がある、といった様々な問題があることを指摘しています。その上で、EU「デジタル単一市場における著作権に関する指令」(2019年4月採択)とEU孤児著作物指令の規定がカバーしている範囲に重複がみられるとし、ほとんど使用されていない後者について撤回の検討を勧めています。

文化遺産の専門家にとって、2つの重複するスキームの存在は多くの不確実性をもたらしうるとし、「デジタル単一市場における著作権に関する指令」におけるアウト・オブ・コマース(out-of-commerce)の作品に関する規定は、EU孤児著作物指令と同一の課題に取り組みながらも、より良い解決策とより簡便な条件を提供するものであると述べています。

Evaluating the Orphan Works Directive(Europeana Pro, 2020/11/19)
https://pro.europeana.eu/post/evaluating-the-orphan-works-directive

参考:
CA1972 – EU新著作権指令にみるデジタル時代の「図書館」像 ―デジタルコンテンツの供給源としての図書館 / 松澤邦典
https://current.ndl.go.jp/ca1972

CA1771 – 動向レビュー:EUにおける孤児著作物への対応 / 今村哲也
カレントアウェアネス No.312 2012年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1771