E2872 – シンポジウム「オープンサイエンス時代におけるデジタル・コンテンツ基盤の構築」<報告>

カレントアウェアネス-E

No.520 2026.03.12

 

 E2872

シンポジウム「オープンサイエンス時代におけるデジタル・コンテンツ基盤の構築」<報告>

千葉大学・村上康子(むらかみやすこ)

 

  2026年1月9日、国公私立大学図書館協力委員会および日本図書館協会大学図書館部会の共催により、2025年度大学図書館シンポジウム「オープンサイエンス時代におけるデジタル・コンテンツ基盤の構築-国立国会図書館と大学図書館の連携・協力によってもたらされる未来」がオンラインで開催され、全国の図書館及び研究機関等から約550名の参加者を得た。

  本シンポジウムは、2023年1月に公表された「オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について(審議まとめ)」やその具現化のための「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会が策定したロードマップにおいて言及された国立国会図書館と大学図書館の連携・協力について、今後、真に全国規模のデジタル・コンテンツ基盤を確立するための将来に向けた方向性を確認することを目的とした。国公私立大学図書館協力委員会委員長の須田伸一氏(慶應義塾大学メディアセンター所長)の開会挨拶に始まり、基調講演、二つの報告、そしてパネルディスカッションが行われた。以下、概要を紹介する。

●基調講演「国立国会図書館の目指すデジタル情報基盤とは」/倉田敬子氏(国立国会図書館長)

  倉田氏からは、オープンサイエンス時代の図書館の役割について、デジタル化による根本的な変化により、知識が固定ではなく、流通・更新・変動するものへと変化することが言及され、国立国会図書館は社会に開かれたプラットフォームを構築する役割を担う必要があることが示された。また、「国立国会図書館ビジョン2021-2025」におけるデジタルシフトにより、5年間で所蔵資料の170万冊というデジタル化が達成されたことなど、それらの整備に心血が注がれた状況が紹介された。大学図書館との連携により目指すものとしては、真の「ナショナルなコレクション」構築と統合されたデジタルデータの活用、データ共有と活用の場としてのプラットフォームが提示された。

●大学図書館からの報告1「研究資源・成果のデジタル・コンテンツの拠点集積から知の場の生成、そして相転移へ」/引原隆士氏(京都大学理事・副学長)

  研究の視点からは、引原氏より、学術情報がテキストからデータへと変遷し、データと論理が分離され始めている現状が報告され、データ量が爆発的に増加していることから図書館の考え方も変わる必要があることが示唆された。

●大学図書館からの報告2「大学教育におけるデジタル基盤の可能性」/畠山珠美氏(元国際基督教大学図書館長、元事務局長)

  教育の視点からは、畠山氏より、昨今のコンテンツ利用の変化を背景にすべての大学においてデジタル・コンテンツ基盤の拡充が重要であり、デジタル・コンテンツを教育に役立て、授業とマッチングさせる役割を図書館員が担う必要があることに言及された。

●パネルディスカッション/モデレーター:竹内比呂也氏(千葉大学副学長・附属図書館長)、登壇者:上記基調講演者、報告者、および田村俊作氏(石川県立図書館長)

  パネルディスカッションにおいては、竹内氏によるモデレートのもとに、社会連携の観点から田村石川県立図書館長を迎えて、それぞれ異なる視点から白熱する議論が交わされた。国立国会図書館と大学図書館に共通する課題として、ナショナルコレクション構築と連携の方向性、プラットフォームの壁と統合、教育活用と連携協力の具現化が示唆された。

  最後に逸村裕氏(日本図書館協会大学図書館部会、筑波大学名誉教授)の挨拶によってシンポジウムは閉じられた。参加者からは、「全国の図書館の連携・支援の輪の広がりへの期待」や「相転移という大きな飛躍の必要性」等への関心が寄せられ、今後の展望への期待感の中、「ナショナルコレクション」基盤の構築に向けた連携・協力の幕が切って落とされるシンポジウムとなった。なお、本シンポジウムの資料と録画は、国公私立大学図書館協力委員会のウェブサイトから公開されているので、ぜひ参照されたい。

Ref:
“2025年度大学図書館シンポジウム「オープンサイエンス時代におけるデジタル・コンテンツ基盤の構築:国立国会図書館と大学図書館の連携・協力によってもたらされる未来」の資料・録画公開”. 国公私立大学図書館協力委員会. 2026-02-20.
https://julib.jp/blog/archives/4652
“2025年度大学図書館シンポジウム:オープンサイエンス時代におけるデジタル・コンテンツ基盤の構築:国立国会図書館と大学図書館の連携・協力によってもたらされる未来”. 国公私立大学図書館協力委員会.
https://julib.jp/symposium_2025
オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会. オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について(審議のまとめ). 2023, 24p.
https://www.mext.go.jp/content/20230325-mxt_jyohoka01-000028544.pdf.pdf
「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会. 「2030デジタル・ライブラリー」推進に向けたロードマップ. 2024.
https://www.mext.go.jp/content/20240701-mxt_jyohoka01-000036744_2.pdf.pdf
“国立国会図書館ビジョン2021-2025―国立国会図書館のデジタルシフト―”. 国立国会図書館.
https://www.ndl.go.jp/aboutus/vision_ndl