2020年7月27日付で、“Data Science Journal”誌第19巻の実践報告(Practice Papers)として、“FAIRness Literacy: The Achilles’ Heel of Applying FAIR Principles”が掲載されています。
この報告は、研究データ同盟(RDA)の研究データの共有プロセスにおける信頼と報酬のメカニズムの解明・改善に取り組む“SHAring Rewards and Credit Interest Group(SHARC IG)”が、2017年以来の活動から得られた教訓を報告するものです。FAIR原則に準拠した研究データの共有は重要ではあるものの、実践者に対して相応の時間・労力・専門知識・モチベーションを要求するため、データを専門としないコミュニティでは、FAIR原則の優先度をなかなか高められない状況にあります。
SHARC IGは、この課題を克服するためにこれまで研究コミュニティで様々な取り組みがなされてきたことを認識しつつ、データサイエンスを専門としない研究者に対して、FAIR原則遵守のための実践への支援やFAIR原則の基準を機械可読なだけではなく、人間の理解できる形へ落とし込む“FAIRness Literacy”の向上が、研究データ共有のプロセスにおいて特に重要なステップであり、人間が適切に理解できる基準の設定は“FAIRness”の評価プロセスやロードマップで一番初めに明確化されるべきである、と指摘しています。
SHARC IGの活動で得られた教訓に基づいて、データを専門としない研究コミュニティにおけるFAIR原則に準拠した研究データ共有の実践準備に必要なプロセスの特定、それぞれの実践や理解レベルに合わせて展開すべき手順やトレーニングの内容などが報告されています。
David, R., Mabile et al. FAIRness Literacy: The Achilles’ Heel of Applying FAIR Principles. Data Science Journal. 2020, 19.
http://doi.org/10.5334/dsj-2020-032
参考:
欧州のFAIR原則促進プロジェクト“FAIRsFAIR”、研究者・データ管理者のFAIR原則への理解度を査定するオンラインツール“FAIR-Aware”を公開
Posted 2020年6月23日
https://current.ndl.go.jp/node/41294
FAIR原則に従ったサービスを実践するためのデータ及びインフラサービスプロバイダに対する提言(文献紹介)
Posted 2020年7月20日
https://current.ndl.go.jp/node/41543
E2052 – FAIR原則と生命科学分野における取組状況
カレントアウェアネス-E No.353 2018.08.30
https://current.ndl.go.jp/e2052