FAIR原則に従ったサービスを実践するためのデータ及びインフラサービスプロバイダに対する提言(文献紹介)

2020年7月7日付で、Elsevier社傘下Cell Pressが刊行するデータサイエンス分野の査読付きオープンアクセス(OA)誌“Patterns”掲載記事として、FAIR原則に従ったサービスを実践するためのデータ及びインフラサービスプロバイダに対する提言“Recommendations for Services in a FAIR Data Ecosystem”が公開されています。

同記事で示された提言は、欧州のFAIR原則促進プロジェクト“FAIRsFAIR”、研究データ同盟(RDA)の欧州における活動拠点RDA Europe、OA学術コンテンツの国際的データベースOpenAIRE、欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC)実現のためのポータルサービスEOSC-hub、永続的識別子に関する基盤の発展を目指すプロジェクトとして欧州委員会の出資するFREYA projectが、2019年中に共同実施した3回のワークショップの成果に当たるものです。これらの団体は協調して、FAIR原則の実現に貢献すべきサービスにとっての共通課題と優先順位を明らかにすることへ取り組み、EOSCの構築を念頭に置きながら、データ基盤の発展とFAIR原則準拠のサービス提供のための協力に関する提言を作成しました。

作成された提言は、認証・重要なインフラストラクチャーの構成要素・機関内におけるデータ運用体制の整備・コスト・評価・協力および支援体制・研究データ管理など、幅広い分野を取り扱っています。これらの提言は様々な利害関係者が、各々の緊急性の認識に応じて優先順位をつけ、それぞれの提言に対応した行動計画と行動を担うべき主体が提起されています。

著者らは提言の作成は未だ進行中の作業ながら、詳細な概要とともに記事で提示された課題と優先順位は、現在コミュニティ内で重要視されている事項であり、FAIR原則準拠の研究データを基盤とする学術エコシステム設立に向けたロードマップ作成において、その明確化と改善に資するものである、としています。

Koers, H. et al. Recommendations for Services in a FAIR Data Ecosystem. Patterns. 2020, 100058
https://doi.org/10.1016/j.patter.2020.100058

参考:
E2052 – FAIR原則と生命科学分野における取組状況
カレントアウェアネス-E No.353 2018.08.30
https://current.ndl.go.jp/e2052

欧州のFAIR原則促進プロジェクト“FAIRsFAIR”、研究者・データ管理者のFAIR原則への理解度を査定するオンラインツール“FAIR-Aware”を公開
Posted 2020年6月23日
https://current.ndl.go.jp/node/41294

バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)、FAIR原則の日本語訳を公開
Posted 2019年11月27日
https://current.ndl.go.jp/node/39604

CA1921 – 「欧州オープンサイエンスクラウド」をめぐる動向 / 尾城孝一
カレントアウェアネス No.335 2018年3月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1921