大学図書館員による学生向け著作権教育:多段階的アプローチ(文献紹介)

2020年7月30日付で刊行された“Journal of Librarianship and Scholarly Communication”に、大学院生の著作権教育に関する論文“Copyright Education for Graduate Students: A Multi-Stage Approach”が掲載されました。

同論文では、著作権教育に関する先行文献のレビューや、米国のテキサスM&A大学の図書館員らによる大学院生を対象とした著作権教育プログラムの説明、今後の展望についてまとめられています。

同館のプログラムは、対象とする大学院生の状況に合わせて、以下の3段階に分かれています。

・移行段階:オンライントレーニング
著作権の基本的内容や適用範囲、大学院生に適用される大学の知的財産に関する規定等について、同大学の大学院教育に関する組織Office of Graduate and Professional Studies(OGAPS)によりオンラインで公開されている教材を用いて学ぶものです。

・発展的段階:専門的なワークショップ
同館とOGAPSが協力し、対面形式で1時間程度のワークショップが開催されます。著作権やフェアユースの基礎を理解している状態から、研究活動や教育における著作権保護対象の資料の利用について事例等を理解している状態にするためのワークショップです。扱われるトピックとしては、過去の出版物の使用、伝統的出版モデルとオープンアクセス(OA)出版モデル、教育者向けの著作権等が挙げられています。

・研究段階:一対一の相談と指導
各学生の研究活動の文脈に沿って著作権やフェアユースについて図書館員と学生一対一での相談、説明等が行われます。学生のニーズに合った指導が行えるという利点があります。

その他、論文では、大学院生向けの著作権教育には、学生の不安感情を軽減させる利点があることに触れられています。また、今後の展望として、最初の段階の教育内容をさらに充実させること、著作権教育に関する大規模な同大学大学院生の意識調査を行うこと、教育方法の見直しを行うこと等が挙げられています。

Copyright Education for Graduate Students: A Multi-Stage Approach(JLSC, 2020/7/30)
http://doi.org/10.7710/2162-3309.2359

参考:
学術情報流通やオンライン出版などをテーマにした“Journal of Librarianship and Scholarly Communication”が創刊
Posted 2012年5月18日
https://current.ndl.go.jp/node/20874