リサーチ・リファレンス・リソース・リザーブ……図書館独特の専門用語を学生は正しく理解しているか?:米・ペンシルベニア州立大学図書館員による報告(文献紹介)

米国ペンシルベニア州のピッツバーグ大学図書館システムが刊行するオープンアクセスジャーナル“Pennsylvania Libraries: Research and Practice”の第8巻第1号(2020年)に、図書館でよく使われる独特の専門用語(library jargon)について調査した、ペンシルベニア州立大学図書館員による実践報告が掲載されています。

報告の中心として検討されているのは、リサーチ・リファレンス・リソース・リザーブの「リ(Re)」で始まる4語です。著者らは、同大学学生の「「リサーチ」は教授のすることだから図書館ウェブサイト上で「リサーチ」と書かれたリンクやタブはクリックしない」という反応や、別の学生による「「リソース」という単語は、ほぼ全ての物事を意味し得るような定義の安定しない単語だ」といった指摘などからこの調査を思い立ちました。2019年4月に同館のリファレンスデスクで、これら4語について、同大学に所属する18歳から22歳までの志願した学生30人に対して2種類の実験が行われています。

1つ目の実験では、本・電話・PCなどの外部の情報源を用いずにそれぞれの用語の意味を書きだす指示を学生に与えました。「リサーチ」については、図書館用語の定義に近い「情報を探すこと」に関する様々なバリエーションの回答が多く見られた一方、「リファレンス」については、図書館用語に近い「情報源」などの回答と図書館の文脈ではない「何かを提案すること」などの回答に分かれたこと、「リザーブ」については、30人中12人が回答できなかったこと、等を報告しています。

2つ目の実験では、これらの4語を含み図書館ウェブサイト上のリンク・タブに見立てられた14種類の付箋紙を用意し、各付箋紙(ウェブサイト上のリンクやタブ)の先にはどのような情報があるのかについて、「よくわかる」「わかるかもしれない」「全くわからない」の3種類に分類させる実験が行われました。「コースリザーブ(Course Reserves)」や「リファレンスシェルフ(Reference Shelf)」に対しては「全く分からない」という回答が多かったこと、利用者である学生は本・辞書など具体的な認識が容易で先にどのような情報があるのか「よくわかっている」場合にそのリンクをクリックしやすくなること、などを報告しています。

著者らは調査結果から、図書館ウェブサイトをより利用者志向とするためには、「リファレンスシェルフ」を具体的な辞書や百科事典に関する直接のリンクへ設定し直したり、「コースリザーブ」を「授業のための資料(Items for your Class)」に置き換えるなど、図書館独特の専門用語の使用を控え、より具体的でわかりやすい言葉を使うことで、学生が無駄な障壁に苦しむことなく学習可能な環境を構築できる、と述べています。

Lynn, Valerie A.; Imler, Bonnie. Librarian Fascination and Student Confusion with “RE” words: Research, Reference, Resources, and Reserves. Pennsylvania Libraries: Research and Practice. 2020, 8(1), p. 64-71.
https://doi.org/10.5195/palrap.2020.222

参考:
図書館用語は学生に理解されているか?
Posted 2006年6月27日
https://current.ndl.go.jp/node/4162

E759 – RUSA,用語「レファレンス」の新しい定義を発表
カレントアウェアネス-E No.124 2008.03.05
https://current.ndl.go.jp/e759

感染症拡大下における優れたデザインの図書館ウェブサイトとは(記事紹介)
Posted 2020年5月25日
https://current.ndl.go.jp/node/41028