2019年におけるフィンランドの大学等の研究成果物のオープンアクセス(OA)化状況:査読付学術論文の64.9%がOAで出版(記事紹介)

デジタルリサーチサービスやオープンサイエンスに関する話題を扱うフィンランド・ヘルシンキ大学のブログ“Think Open”に、2020年5月20日付で、フィンランドの高等教育機関による研究成果物のオープンアクセス(OA)化が近年大きく進展していることを紹介した記事が掲載されています。

フィンランドのOAに関するモニタリングは教育文化省の実施する国内の出版データ収集と一体化して取り組まれており、2016年からOA状況の報告には同一フォーマットが利用されているため、2016年から2019年までの4年間については同一基準で比較可能になっています。出版物の質と量は大学への予算配分基準の一つになっており、2021年以降、OA出版物には1.2の係数を掛ける運用が導入されるため、フィンランドの大学は出版物に関する正確なデータ収集・OA出版物の増産へ強い関心を持っています。フィンランド国立図書館が運営する国内の研究成果物の書誌情報検索サイトJuuli経由で収集された最新のデータに基づいて、ブログ記事ではフィンランドのOA状況として主に以下のことを紹介しています。

・近年、査読付学術論文のOA化は目覚ましく進展しており、国内で最もOA出版を進めているユヴァスキュラ大学(University of Jyväskylä)では2019年に発表された査読付学術論文の80%以上がOA出版されている

・2019年には全ての大学で50%以上の査読付学術論文のOA出版が達成され、全国平均でも64.9%を記録した。2018年の50.9%よりも大きく数字を伸ばし、2016年からは率として2倍以上の伸長になっている

・査読付学術論文のOA出版が目覚ましく進展していることは確かだが、欧州連合(EU)やフィンランド・教育文化省の設定する2020年までの100%のOA化の目標達成は困難な見通しである

・近年のOA出版の進展の要因はハイブリッドOAによるOA化の定着や大学のセルフアーカイビングサービスの充実によるグリーンOAの増加などが影響している

Julkaisujen avoin saatavuus yleistyy nopeasti suomalaisissa yliopistoissa(Think Open,2020/5/20)
https://blogs.helsinki.fi/thinkopen/oa-tilastot-2019/

Open access on the rise at Finnish universities(Think Open,2020/5/25)
https://blogs.helsinki.fi/thinkopen/oa-statistics-2019/

参考:
応用科学大学コンソーシアム運営によるリポジトリサービス“Theseus”等のネットワークが展開するオープンな研究成果物公開プラットフォーム(フィンランド)(記事紹介)
Posted 2019年10月31日
https://current.ndl.go.jp/node/39404

フィンランド研究コミュニティの2020年から2025年までの国家戦略・事業計画の第1部として学術出版物のオープンアクセス(OA)に関するポリシーが公開される
Posted 2019年11月29日
https://current.ndl.go.jp/node/39631

フィンランド研究コミュニティの共同体“Avoin tiede”、2020年から2025年までのオープンサイエンス・オープンリサーチに関する共通の方向性を提示した宣言を公開
Posted 2020年1月14日
https://current.ndl.go.jp/node/39943